勝利投手の最多失点数

いくら抑え込んでも勝ち星が付かないこともあれば、たくさん失点しても勝利投手になることもある。ただしこの記録は、ただの”運がいい”だけではない。

一般的には?

勝利投手の記録は、失点の少なさだけで決まるわけではない。決勝のリードを奪った時点での登板状況や、先発投手の投球回などが関わる。通常の試合では先発が5回以上投げることが必要だが、「何失点までなら勝利投手」という上限はない。[A3]

1949年の1チーム1試合平均失点
約4.81点

答え

勝利投手の1試合失点数13失点

NPBの勝利投手の最多失点は13失点。1949年4月26日、巨人の川崎徳次が大映戦で9回を投げ切り、15対13の完投勝利を挙げた。先発・救援を含めた最多記録であり、先発投手の記録でもある。[A1][A2]

年
1949年
選手
川崎徳次
チーム
読売ジャイアンツ
カテゴリ
投手

普通と比べると

1949年の1チーム1試合平均失点
約4.81点
勝利投手の1試合失点
13点

同年の1チーム1試合平均の約2.70倍で、約8.19点多い。

1949年の8球団の合計失点5,217 ÷ 延べチーム試合数1,084 = 4.8127306点。1試合につき両チームを1件ずつ数え、引き分けも含む。これは「勝利投手だけの平均失点」ではなく、当年の試合の得点環境を示す参考比較である。チーム全体と投手個人という集計単位の違いがある。[A4] 2025年の先発勝利投手は、勝った登板での失点が平均約1.04点だった。川崎の13失点は、その約12.5倍に当たる。この値は2025年だけの参考値であり、2000年以降全体の平均ではない。時代と得点環境が異なるため、1949年の同年比較とは分けて扱う。[A5][A6] 2025年3月28日~10月5日のセ・パ一軍公式戦全858試合(交流戦を含む)から、先発投手が勝利投手となった583登板を抽出。その登板での個人失点合計606 ÷ 583 = 1.03945111点。失点には非自責点も含む。救援勝利、勝敗の付かなかった先発登板、敗戦、オープン戦、CS、日本シリーズは除外。投手ごとの平均を平均せず、1登板を1件として計算した。[A5]

詳細

◇13失点した投手が自分で9打点

川崎は16安打を浴び、そのうち8本が本塁打だった。一方、打席では5打数4安打、3本塁打、9打点。巨人の15打点のうち6割を投手本人が記録した。大量失点を打線が取り返した試合だが、その打線の中心に川崎自身がいた。[A2][B1][B2]

勝利数には、味方の援護という運が絡む。この試合は、その運で勝ちが転がり込んだ例ではない。13失点を喫した本人が9打点を挙げ、空けた穴の多くを自分のバットで埋めている。

◇試合のスコアボード

1949年4月26日 巨人対大映4回戦 石川県営兼六園球場 観衆約2万人。[A2][B1][B2]

チーム123456789RHE
大映40120014113163
巨人02500026×15170

R 得点 H 安打 E 失策 × 巨人がリードしており9回裏の攻撃は行わなかった。[B1][B2]

◇終盤に逆転してから最終回を投げ切る

3回終了時は7対5で巨人がリードしたが、4回に同点、7回に大映が勝ち越した。巨人も7回裏に2点を取り返し、8回表に4失点して9対12。8回裏に6点を奪い、15対12と逆転した。[B1][B2]

川崎は2回に2点適時打、3回に満塁本塁打、7回に2ラン、8回にソロを放った。8回の6得点は川崎のソロ、白石敏男の2ラン、山川喜作の3ランによるもの。川崎は9回にさらに1点を失ったが、2点差を残して試合を終えた。[B2]

◇投球結果

球団投手区分投球回打者被安打奪三振四死球失点自責点
巨人川崎徳次先発 勝94516541313
大映池田善蔵先発—4313481210
大映河村章救援—640033

川崎の13失点はすべて自責点。巨人の失策も0で、失策によって失点数だけが膨らんだ記録ではない。[B1][B2]

資料注記 大映投手の投球回と敗戦投手は、B1とB2で記載が一致しないため掲載を見送った。池田の12失点、河村の3失点はB2による。打者・被安打・奪三振・四死球・自責点は両資料で一致する。球数は確認できない。詳細表は一次資料の原票ではなく、公開された試合記録2資料からの整理である。

◇本塁打が出やすい球場だった

兼六園球場は1948年9月に拡張されていたが、この試合時点でも両翼90メートル、中堅97メートルと小さかった。初期の両翼85メートル、中堅90メートルのままではない。両軍合計13本塁打という打ち合いには、この球場の条件が関わったと考えられる。[A2]

◇巨人のオーダーと打撃結果

打順に沿って当日の成績を掲載。[B1][B2]

巨人のオーダーと打撃結果
順守備選手打数安打打点打席順の打撃結果
1二千葉茂530遊ゴ / 四球 / 右安 / 中安 / 三振 / 右安
2遊白石敏男522三ゴ / 三ゴ / 遊安 / 右飛 / 四球 / 中本②
3中青田昇630三振 / 遊安 / 左飛 / 一邪飛 / 左中二 / 左安
4一川上哲治400死球 / 中飛 / 遊飛 / 三ゴ失 / 四球 / 中飛
5左平山菊二420左安 / 左安 / 遊ゴ / 捕飛 / 四球
6三山川喜作423三振 / 四球 / 三安 / 右飛 / 中本③
7右萩原寛400遊ゴ / 二飛 / 右飛 / 遊ゴ失
↳右小松原博喜110右安
8捕藤原鉄之助301四球 / 四球① / 遊飛 / 中飛 / 遊ゴ併
9投川崎徳次549右安② / 中本④ / 三振 / 右本② / 中本①

チーム合計 41打数17安打 15打点 5本塁打

二 二塁打 安 単打 本 本塁打 飛 フライ 邪飛 ファウルフライ ゴ ゴロ ゴ併 ゴロ併殺 失 失策による出塁。守備欄は先発時の位置、途中出場は代打または交代後の位置を示す。

◇9番投手が最大の打撃貢献

川崎の3本塁打は満塁、2ラン、ソロで計7打点。2回の適時打の2打点を加えて9打点になる。3番青田、4番川上、5番平山の打点は全員0で、得点を生み出す中心は通常の主軸とは違っていた。[B1][B2]

◇大映のオーダーと打撃結果

打順に沿って当日の成績を掲載。[B1][B2]

大映のオーダーと打撃結果
順守備選手打数安打打点打席順の打撃結果
1三伊賀上良平434右邪飛 / 二安 / 左本② / 四球 / 右本②
2遊三村勲531右本① / 右安 / 左飛 / 右飛 / 遊安
3中小鶴誠422四球 / 右飛 / 三邪飛 / 左安 / 中本②
4左加藤正二512右本② / 右飛 / 中飛 / 三ゴ併 / 三振
5一大岡虎雄511右飛 / 右飛 / 二ゴ / 右本① / 右飛
6右飯島滋弥542右二 / 右本① / 三飛 / 右二 / 中本①
7二酒沢政夫411右安① / 二飛 / 中飛 / 投ゴ / 四球
8捕伊勢川真澄400三振 / 捕邪飛 / 一飛 / 四球 / 二ゴ併
9投池田善蔵410三振 / 右安 / 三振 / 三振
↳投河村章000
↳打渡辺一衛100一ゴ

チーム合計 41打数16安打 13打点 8本塁打

二 二塁打 安 単打 本 本塁打 飛 フライ 邪飛 ファウルフライ ゴ ゴロ ゴ併 ゴロ併殺 失 失策による出塁。守備欄は先発時の位置、途中出場は代打または交代後の位置を示す。

◇8本の本塁打を打っても敗戦

大映は三村、加藤、大岡、小鶴が各1本、伊賀上と飯島が各2本を放った。大映だけで8本、巨人が5本。大量の本塁打を浴びた川崎も降板せず、双方の打撃力が勝敗を左右した。[A2][B1][B2]

救援投手はどう考えるか

本稿は先発・救援を含む最多失点を主題とし、その記録保持者が先発完投だったため、先発の試合をメインにした。救援限定の歴代最多失点は、確認した資料では確定できず、別の最多数字は載せない。

救援投手にも、失点数だけを理由に勝ちを禁止する一律の上限はない。ただし、短い救援登板で効果的な投球をしなかった場合には、後続投手へ勝ちを与える例外がある。先発が必要な投球回を満たさず複数の救援が投げた場合も、記録員が最も効果的だった投手を選ぶ。「味方さえ逆転すれば、どの救援投手にも必ず勝ちが付く」とは限らない。[A3]

確認日 2026年10月5日。最多記録の結論はNPBの公式解説に基づく。一般公開の歴史的試合記録を突き合わせて詳細表を作成したが、大映投手の投球回・敗戦投手には資料差が残るため断定していない。

出典