延長戦で両チームは何点まで取り合ったのか

同点で迎えた延長戦。次の1点が勝敗を左右する緊迫の試合が、突然の猛攻で別の姿に。

一般的には?

延長戦では、表の攻撃で1点を取って裏を無失点に抑えれば決着する。両軍が1点ずつ取り合えば、さらに次の回へ進む。本記事で数えるのは、1試合の10回以降に両軍が挙げた得点の合計。9回までの得点は入れず、延長が何イニング続いてもすべて足す。

答え

確認できた延長戦の両軍合計得点12点

10回以降の両軍合計が12点になった試合として、2019年4月10日の東京ヤクルト対広島東洋と、同年6月23日のオリックス対広島東洋を確認できた。前者は12点+0点、後者は9点+3点。どちらも延長10回だけで12点に達している[A1][A2]。

年
2019年
チーム
東京ヤクルトスワローズ/広島東洋カープ(2019年) オリックス・バファローズ/広島東洋カープ(2019年)
カテゴリ
チーム・試合

詳細

◇確認できた大きな記録は12点

ただし、今回の条件による歴代最多を保証する公表資料は確認できていない。全時代の全延長試合を再集計した結果でもないため、12点を「歴代最多」、この2試合を「同率首位の全件」とは断定しない。本稿は、最多候補の2試合を詳しくたどる調査稿とする。

◇どこからどこまでを足すのか

日付・カード9回終了時最終スコア10回以降の内訳合計
2019-04-10 ヤクルト対広島3-315-3ヤクルト12+広島012点
2019-06-23 オリックス対広島0-09-3オリックス9+広島312点

計算:延長戦の両軍合計=最終的な両軍総得点−9回終了時の両軍総得点。4月は(15+3)−(3+3)=12、6月は(9+3)−(0+0)=12。公式のイニング別得点とも一致する[A1][A2]。

◇大乱打戦でも延長の得点は少ないことがある

1993年5月19日のヤクルト17-16広島は、9回までに16-16。延長14回のサヨナラで増えたのは1点だけだった。試合全体では33点でも、今回の集計では1点になる。最終スコアの大きさだけから「荒れた延長戦」は選べない[B1]。

参考:1996年8月9日の阪神14-3横浜では、3-3で迎えた延長12回表に阪神が11得点した。これは延長1イニングの当時の最多で、2019年4月の12得点に更新された。ただし、1チーム1イニングの記録は本記事の集計条件と異なる[B2][B3]。

全年代の延長戦の平均は算出していない。上の例は集計の違いを示す参考比較であり、平均値や歴代順位ではない。

◇一方の猛攻で接戦が変わった試合

2019年4月10日 広島東洋対東京ヤクルト2回戦 マツダスタジアム。ヤクルト15-3広島、延長10回。試合時間4時間29分、観衆30,740人[A1]。

チーム12345678910RHE
東京ヤクルト0012000001215162
広島東洋1000200000384

勝利:マクガフ 敗戦:中崎翔太 本塁打:両軍なし[A1][B4]。

◇逆転と同点を経て延長へ

広島は初回、田中広輔の安打と一塁手の失策で一、三塁とし、野間峻祥の二ゴロで先制。ヤクルトは3回に雄平の適時打で追いつき、4回にはバレンティンと雄平の適時打で3-1と勝ち越した。広島も5回、菊池涼介の遊ゴロと野間の犠飛で2点を返し、3-3とする[A3]。

6〜9回は両軍とも無得点。ヤクルトは7回の二死満塁を切り抜け、9回はマクガフが三者凡退に抑えた。ここまでの流れは、1点が勝敗を分けそうな接戦だった[A3]。

◇打者16人が回った10回表

先頭の中村悠平が中前打。荒木貴裕の一塁への打球は失策となり、上田剛史の投ゴロ、青木宣親の中前打で一死満塁。山田哲人の二塁への打球が失策となり、勝ち越した。続くバレンティン、雄平、西浦直亨の適時打で、広島の中崎から中田廉への交代を挟みながら点差が広がった[A3][B4]。

大引啓次の二塁への打球も失策。打順がもう一度回った中村と荒木が適時打を放ち、山田の四球の後、代走で出た田代将太郎が満塁走者を一掃する三塁打を打った。計8安打、四球と死球が各1、3失策が絡み、12点。裏は五十嵐亮太が三者凡退で締め、延長の合計は12点のまま終わった[A1][A3][B2][B4]。

◇代走で出た選手が打席に立った

田代はバレンティンの代走として出場した後、同じ回のうちに打順が回り、1打数1安打3打点。上田、中村、荒木、山田、雄平もこの回に2打席立った。大量得点の勢いは、本塁打ではなく打線のつながりと守備の乱れによるものだった[A1][A3][B4]。

中崎は5失点で自責点0、中田は7失点で自責点3。12失点をすべて自責点と扱うと、試合の性質を取り違える。失点と自責点は下の投球表でも分けた[A1][A3]。

◇ヤクルトのオーダーと打撃結果

4月10日。先発は打順を記載し、途中出場選手は交代した打順の直下に置く。各選手の試合全体の成績と全打席結果。丸数字はその打席の打点[A1][A3]。

位置選手名打順打数安打打点打席結果
(三)太田賢吾15001回:三ゴ/2回:空三振/4回:投ゴ/5回:遊ゴ/7回:二飛
代打→右上田剛史20010回:投ゴ/二ゴ
(中)青木宣親25201回:左安/3回:遊ゴ/4回:四球/6回:三ゴ/8回:空三振/10回:中安
代打→中塩見泰隆00010回:死球
(二)山田哲人35101回:空三振/3回:中二/4回:空三振/6回:四球/8回:中飛/10回:二失/四球
(左)バレンティン45221回:四球/3回:三失/4回:左安①/6回:見三振/8回:空三振/10回:右安①
代走→左田代将太郎11310回:中三③
(右)雄平56341回:四球/3回:右安①/4回:左二①/6回:中飛/9回:空三振/10回:中安②/左飛
(投)五十嵐亮太000打席なし
(遊)西浦直亨66211回:一飛/3回:空三振/4回:中飛/7回:左安/9回:三飛/10回:中二①
(一)村上宗隆74002回:遊ゴ/3回:四球/5回:二ゴ/7回:投飛/9回:空三振
(投)マクガフ000打席なし
代打→三大引啓次10010回:二失
(捕)中村悠平86412回:左安/3回:右飛/5回:左安/7回:空三振/10回:中安/左安①
(投)ブキャナン91002回:投犠打/4回:四球/5回:投ゴ
(投)ハフ000打席なし
代打西田明央0007回:四球
(投)梅野雄吾000打席なし
(投)近藤一樹000打席なし
(一)荒木貴裕21210回:一失/左二②
合計49打数16安打13打点、8四球1死球、10三振

二失・一失・三失は失策による出塁。合計の四球8、死球1は分けて記載。投手として出場しても打席に立たなかった選手は「打席なし」とした。

◇広島のオーダーと打撃結果

4月10日。安打は8本、打点は3。初回と5回の得点はいずれもアウトになった打席で生まれており、打点がある打席を安打扱いにはしない[A1][A3]。

位置選手名打順打数安打打点打席結果
(遊)田中広輔14201回:中安/2回:二ゴ/5回:四球/7回:投安/9回:見三振
(二)菊池涼介25011回:一失/3回:右飛/5回:遊ゴ①/7回:三ゴ/9回:三ゴ
(中)野間峻祥34021回:二ゴ①/3回:見三振/5回:右犠飛①/7回:二ゴ/9回:遊ゴ
(右)鈴木誠也44001回:三ゴ/3回:空三振/5回:中飛/7回:四球/10回:捕邪飛
(一)松山竜平55201回:右飛/4回:右安/6回:右安/7回:右飛/10回:右邪飛
(左)長野久義65002回:遊ゴ/4回:一併打/6回:見三振/8回:空三振/10回:遊ゴ
(三)安部友裕71002回:四球/4回:遊飛
(投)アドゥワ誠000打席なし
代打バティスタ1006回:遊飛
(投)一岡竜司000打席なし
(投)フランスア000打席なし
代打西川龍馬1008回:三邪飛
(投)中崎翔太000打席なし
(投)中田廉000打席なし
(捕)會澤翼83202回:右安/5回:左二/6回:見三振/8回:四球
(投)野村祐輔90002回:一犠打
(三)小窪哲也2205回:中安/7回:中安
代走→三曽根海成1008回:一ゴ
合計36打数8安打3打点、4四球0死球、6三振

投安は投手への内野安打、犠打・犠飛は打数に含まない。途中出場選手の成績を、交代前の選手の成績に合算していない。

◇接戦から大量失点へ変わった継投

4月10日の登板順。投球回の1/3は1アウト、2/3は2アウト。Hはホールド[A1][A3]。

ヤクルト
順投手登板場面回球数打者安打四球死球三振失点自責
1ブキャナン1〜5回57122520232
2ハフ(H)6回1114100200
3梅野雄吾(H)7回1206210000
4近藤一樹(H)8回1164010100
5マクガフ(勝)9回1133000100
6五十嵐亮太10回193000000
広島
順投手登板場面回球数打者安打四球死球三振失点自責
1野村祐輔1〜4回410324650433
2アドゥワ誠5〜6回2288110100
3一岡竜司(H)7回1145110100
4フランスア(H)8回1153000200
5中崎翔太(敗)9回〜10回1死1 1/3429300250
6中田廉10回1死から0 2/33610511073

両軍とも6人が登板。ヤクルトの救援5人は全員無失点。広島もアドゥワ、一岡、フランスアは無失点だったが、9回を抑えた中崎が続投した10回に試合が変わった[A1][A3]。

◇延長1イニングの新記録

当時の報道で「プロ野球新記録」とされたのは、ヤクルトの延長1イニング12得点。従来の阪神11得点を上回った。日刊スポーツは、最終的な12点差も延長戦での最多として報じている。両軍合計の延長得点についての歴代順位を示した報道ではない[B2]。

◇投手戦の最後に両軍が打ち合った試合

2019年6月23日 広島東洋対オリックス3回戦 マツダスタジアム。オリックス9-3広島、延長10回。試合時間3時間49分、観衆31,400人[A2]。

チーム12345678910RHE
オリックス00000000099140
広島東洋0000000003380

勝利:ディクソン 敗戦:菊池保則 本塁打:両軍なし[A2][B5]。

◇9回まで両軍無得点

オリックスの田嶋大樹は6回2安打7奪三振、広島のジョンソンは7回6安打8奪三振で、いずれも無失点。オリックスは3回に二死満塁を逃した。広島は8回の二死一、二塁を生かせず、9回も一死一、三塁から會澤翼の遊ゴロで三塁走者が本塁でアウト。長野久義も見逃し三振となり、サヨナラには届かなかった[A2][A4]。

◇二死から9点を奪った長打攻勢

10回表、代打の西野真弘が二塁打。代打の後藤駿太が送り、福田周平の四球と盗塁を挟み、小島脩平の三振で二死二、三塁となった。大城滉二の2点二塁打で均衡が破れ、続く小田裕也の三塁打、中川圭太の二塁打、安達了一の三塁打で5-0。投手交代後も止まらず、2四球の後に後藤の3点三塁打、福田の三塁打が続いた[A4]。

この回は打者13人、7安打がすべて長打。二塁打3本と三塁打4本で、9点はすべて二死から生まれた。4月の試合とは違い、失策は両軍とも0だった[A2][A4][B6]。

◇その裏にも3点が入った

広島は10回裏、松山竜平の内野安打と野間の死球で一死一、二塁。投手が山﨑福也から小林慶祐に替わり、田中広輔の二塁打で1点、さらに西川龍馬の四球の後、鈴木誠也の投手への内野安打で2点を返した。最後は比嘉幹貴が會澤を遊ゴロに打ち取った。表9点、裏3点で、延長だけの両軍合計が12点となった[A2][A4]。

9回まで計18回の攻撃が無得点だったのに、最後の表裏だけで12点。両チームが得点した「荒れた延長戦」という問いには、4月よりもこの試合の展開がよく合う。これは試合経過を踏まえた本稿の評価である。

◇オリックスのオーダーと打撃結果

6月23日。途中出場を含む全出場選手。10回の2打席目は同じ回として続けて掲載。位置と集計成績はNPB公式、打席結果はパ・リーグ.com[A2][A5][B5]。

位置選手名打順打数安打打点打席結果
(二)福田周平15411回:中安/3回:右安/5回:左安/8回:中飛/10回:四球/10回:右三①
(中)佐野皓大24001回:遊ゴ/3回:空三振/5回:二ゴ/8回:空三振
代打→左小島脩平20010回:空三振/10回:左飛
(遊)大城滉二34121回:空三振/3回:四球/6回:投ゴ/8回:見三振/10回:左二②
(左)吉田正尚43102回:四球/3回:見三振/6回:空三振/9回:中安
代走→左→右小田裕也11110回:中三①
(一)中川圭太55212回:二併打/4回:投ゴ/6回:左安/9回:左飛/10回:左二①
(三)安達了一65212回:左二/4回:一ゴ/6回:二ゴ/9回:空三振/10回:右三①
(右)西村凌74102回:遊飛/4回:投安/7回:中飛/9回:投ゴ/10回:四球
(捕)山崎勝己000打席なし
(捕)若月健矢82003回:死球/4回:見三振/7回:三ゴ
代打西野真弘11010回:左二/10回:四球
(投)山﨑福也000打席なし
(投)小林慶祐000打席なし
(投)比嘉幹貴000打席なし
(投)田嶋大樹92003回:見三振/5回:見三振
代打頓宮裕真1007回:空三振
(投)エップラー000打席なし
(投)近藤大亮000打席なし
(投)ディクソン000打席なし
代打→中後藤駿太11310回:投犠打/10回:右三③
合計40打数14安打9打点、5四球1死球、12三振

後藤は代打で犠打を決めた後、同じ回の2打席目に3点三塁打。西野は二塁打と四球で2度出塁し、2得点した。福田は試合全体で4安打[A4][A5]。

◇広島のオーダーと打撃結果

6月23日。先発の守備位置から移った選手は矢印で記載。投安・一安は内野安打で、10回の得点にもつながった[A2][A5][B5]。

位置選手名打順打数安打打点打席結果
(遊)田中広輔15211回:空三振/4回:空三振/6回:右安/8回:右飛/10回:中二①
(二)菊池涼介25101回:空三振/4回:中二/6回:空三振/9回:空三振/10回:見三振
(中)→左西川龍馬33101回:見三振/4回:四球/7回:一ゴ/9回:左安/10回:四球
(右)鈴木誠也45222回:中飛/4回:三ゴ/7回:遊飛/9回:右安/10回:投安②
(左)高橋大樹53002回:捕邪飛/4回:中飛/7回:空三振
(投)レグナルト000打席なし
(捕)會澤翼2009回:遊ゴ/10回:遊ゴ
(一)バティスタ63102回:左邪飛/5回:空三振/8回:左安
代走曽根海成000打席なし
(投)フランスア000打席なし
代打長野久義1009回:見三振
(投)菊池保則000打席なし
(投)藤井皓哉000打席なし
(三)上本崇司73003回:左飛/5回:二直/8回:捕犠打/10回:右飛
(捕)石原慶幸82003回:一飛/5回:二直
代打→一松山竜平2108回:遊飛/10回:一安
(投)ジョンソン92003回:見三振/6回:右飛
(中)野間峻祥0008回:敬遠/10回:死球
代走小園海斗000打席なし
合計36打数8安打3打点、3四球1死球、11三振

小園は10回に野間の代走で出場し、田中の二塁打で三塁へ、鈴木の安打で生還した。自身の打席がなくても得点は記録される[A4][A5]。

◇無失点が続いた後の継投

6月23日の登板順。9回までと10回の投球を分けて読むと、得点の集中が見える[A2][A5]。

オリックス
順投手登板場面回球数打者安打四球死球三振失点自責
1田嶋大樹1〜6回69220210700
2エップラー(H)7回193000100
3近藤大亮(H)8回1155110000
4ディクソン(勝)9回1265200200
5山﨑福也10回先頭1/383101022
6小林慶祐10回1死から1/3144210111
7比嘉幹貴10回2死から1/371000000
広島
順投手登板場面回球数打者安打四球死球三振失点自責
1ジョンソン1〜7回711227621800
2レグナルト(H)8回1173000200
3フランスア(H)9回1174100100
4菊池保則(敗)10回先頭2/3198510166
5藤井皓哉10回2死から1/3225220033

◇三塁打の記録と日曜日の初勝利

オリックスの1イニング4三塁打は、当時のパ・リーグ新記録。1リーグ時代に巨人が1947年に記録した4本にも並ぶ猛攻だった。小田、安達、後藤、福田が1本ずつ打っている[A4][B6]。

この勝利は、その年のオリックスにとって日曜日の初白星だった。開幕から日曜日は引き分けを挟んで10連敗しており、13試合目でようやく勝った。一方の広島は、この敗戦で交流戦最下位が決まった。投手戦から突然生まれた9得点は、両チームに異なる区切りをもたらした[B6]。

◇集計範囲と出典

◇対象範囲と残る確認

対象はNPB一軍レギュラーシーズン公式戦(交流戦を含む)。1試合の10回以降に実際に記録された両軍の得点を合算する。日本シリーズ、CS、球宴、オープン戦、二軍、高校野球、MLBなどは含めない。確認日は2026年10月5日。

確認済みなのは、掲載2試合の延長合計12点、投打成績、全体の試合経過、比較例の集計値。未確認なのは、全時代に12点を上回る試合がないことと、12点の達成試合がこの2件だけであること。報道の「延長1イニング最多」を「延長全体の両軍合計最多」に読み替えることはしない。

公開前に必要な追加確認:全延長試合のイニング別得点を集め、10回以降の合計を各試合について計算するか、この条件の歴代記録を確認できる記録資料・記録担当者の回答を得る。最大値と同数全件が確定した時点で、答え欄を正式な最多記録に更新する。本稿の現状では「歴代最多」と断定した公開用タイトルへ変更しない。

確認日はいずれも2026年10月5日。AはNPB・球団・リーグの公式資料。Bは報道、回顧記事、民間記録集。得点の合計と比較値は本稿で計算した。打席結果を統一表記に整え、打点を丸数字で付記した。

何がすごいのか

  • 同じ延長12点でも、4月は12-0、6月は9-3。前者は接戦から一方的な猛攻へ変わり、後者は無得点の投手戦から両軍が得点する展開へ変わった。両試合とも本塁打なしで、最後の1イニングの表裏だけに点が集中している[A1][A2][B4][B5]。

出典