奪三振を記録し続けた最長の連続イニング

一般的に、イニング数を上回る奪三振数をとれる投手は奪三振能力が高いと評される。では、登板した回で必ず三振を奪う投球は、いったい何イニング続いたのか。

一般的には?

1試合の奪三振数が多くても、三振が一つの回に集中すれば、毎回奪三振にはならない。ここで調べるのは、一人の投手が自分の投げた各回で1個以上の三振を奪い、それを何イニング続けたかという記録だ。試合が変わっても連続をつなぎ、シーズンをまたぐ例も確認する。試合ごとに1個以上を奪う「連続試合奪三振」や、打者を続けて三振に取る「連続打者奪三振」とは数え方が異なる[2][14][15]。

サファテが更新する前のNPB最長記録
28イニング

答え

奪三振を記録した最長の連続イニング43イニング

答えは43イニング。福岡ソフトバンクホークスのサファテが、2015年5月8日の楽天戦9回表から9月10日の日本ハム戦9回裏まで、41登板にまたがって記録した。シーズンをまたいだ例を含めても、確認できたNPB一軍公式戦の最長記録はこの43イニングである[1][7][13][20]。

年
2015年
選手
サファテ
チーム
福岡ソフトバンクホークス
カテゴリ
投手

普通と比べると

サファテが更新する前のNPB最長記録
28イニング
奪三振を記録した最長の連続イニング
43イニング

従来の最長記録より15イニング長い。約1.54倍。

一般投手の平均継続イニング数は今回確認できなかったため、2002年に張誌家(西武)が記録した従来の最長28イニングと比較する。43−28=15、43÷28=1.5357…。「普通の数字」は一般投手の平均ではなく従来の最長記録。奪三振数や1イニング平均奪三振数とは比べない[2]。

詳細

◇43イニングと43投球回は同じではない

この記録は、三振を奪った回が連続でいくつあったかを数える。途中から登板した回も含まれる。実際、最後の9月10日は9回裏2死一、二塁から登板し、陽岱鋼を3球で見逃し三振に取った。投球回は3分の1回でも、その9回に奪三振を記録したことで43イニング連続となった[7][8]。

登板別成績を5月8日から9月10日まで足すと、41試合、実際の投球回は41回、奪三振は77個。7月21日と8月29日は二つの回にまたがって登板し、どちらの回でも三振を奪っている。そのため連続した回の数は、登板数とも、アウト数を3で割った投球回とも一致しない[5][6][13]。

次の内訳は記録が続いた期間だけを対象にした再集計。連続イニング数は途中登板した回を含み、投球回の端数は3分の1回単位で換算した[5][6][7][13]。

期間(2015年)登板投球回奪三振三振を記録した回の数
5月8~31日88198
6月109 2/31910
7月88 1/3149
8月1111 2/31912
9月2~10日43 1/364
合計41417743

◇始まりは本塁打を浴びた回

2015年5月8日 ソフトバンク対楽天5回戦 ヤフオクドーム。5対1の9回表にサファテが登板した。銀次への四球に続き、松井稼頭央に2ランを浴びたが、そこから枡田慎太郎、ペーニャ、後藤光尊を3者連続三振に取って5対3で試合を終えた。失点した回からでも、この記録は始まる[3][4]。

打者打席結果打席後のアウト打席後の走者
銀次四球0一塁
松井稼頭央右本②0なし
枡田慎太郎空振り三振1なし
ペーニャ見逃し三振2なし
後藤光尊空振り三振3なし

②は打点。9回表の打席結果はパ・リーグ公式速報、2失点と5対3の最終結果はNPB公式成績で確認[3][4]。

◇満塁の火消しでも連続をつなぐ

7月21日のロッテ戦では、3点リードの8回表2死満塁で五十嵐亮太に代わって登板。清田育宏を3球で空振り三振に仕留めた。続く9回表も先頭の根元俊一を三振に取り、1回3分の1の投球で二つの回に奪三振を残した。9回だけを担当していたわけではない[5]。

8月2日に従来の日本記録を超える

8月2日 西武対ソフトバンク 西武プリンスドーム。4対3の9回裏、外崎修汰を遊ゴロに打ち取った後、秋山翔吾を空振り三振に仕留めて29イニング連続となった。従来の張誌家の28イニングを更新し、さらに脇谷亮太も見逃し三振に取って試合を締めた[2][21]。

打者打席結果打席後のアウト記録の状態
外崎修汰遊ゴロ1この回の三振はまだなし
秋山翔吾空振り三振229イニング連続で日本新記録
脇谷亮太見逃し三振329イニング連続のまま試合終了

◇最後は3球で一つのイニングを加える

8月29日の日本ハム戦では8回途中から9回まで投げ、各回2個ずつ、計4三振。8月30日を終えると連続は39イニングとなり、9月2日、6日、8日にも三振を奪って42まで伸ばした[6][13]。

9月10日 日本ハム対ソフトバンク21回戦 札幌ドーム。7対3の9回裏、岩嵜翔が2死一、二塁としたところでサファテが登板。陽岱鋼を見逃し三振に取り、連続を43とした。登板したのは打者1人、投じたのは3球で、36セーブ目が付いた[7][8]。

三振が消えた9月13日の9回裏

9月13日 楽天対ソフトバンク20回戦 コボスタ宮城。6対5の9回裏に登板したサファテは、最初の2アウトを外野フライで取った。四球で出したペーニャの代走・森山周に二盗を許し、2死二塁から牧田明久の適時三塁打で同点に追いつかれた。最後の銀次も右飛で、5打者に三振ゼロ。43イニング連続がここで止まった[9][10][11]。

打者打席結果打席後のアウト打席後の走者
藤田一也右飛1なし
ペーニャ四球1一塁(代走・森山周)
ウィーラー中飛2一塁
牧田明久右三①2三塁
銀次右飛3三塁

ウィーラーの打席後、牧田の打席中に森山が二盗。表の走者は各打席の直後を示す。①は打点。打席結果・盗塁は公式速報、1回5打者1安打1四球0奪三振・自責点1はNPB公式成績で確認[9][10]。

試合は延長10回表、2死一、二塁から福田秀平の適時三塁打でソフトバンクが2点を勝ち越した。10回裏は五十嵐が締め、8対6で勝利。記録が止まったサファテに、今季5勝目が記録された[9][10]。

チーム12345678910RHE
ソフトバンク21110010028150
楽天41000000106141

スコアボードは9月13日のNPB公式結果。Rは得点、Hは安打、Eは失策[10]。

記録を支えたシーズン全体の三振能力

この年のサファテは65試合で41セーブを挙げ、最多セーブのタイトルを獲得。64回3分の2を投げて102奪三振、防御率1.11だった。奪三振率は102×9÷(64+2÷3)=約14.20。救援投手ながらシーズン100奪三振を超えており、各回に三振を残し続けた投球を、通年成績からも読み取れる[1][12]。

登板勝利敗北セーブホールド投球回奪三振防御率
655141964 2/31021.11

2015年の一軍公式戦成績。投球回は3分の1回単位。43イニング連続奪三振とシーズン41セーブは、それぞれパ・リーグ連盟特別表彰の対象となった[1][12]。

同一シーズンの主な長期継続例
選手名球団年連続イニング
サファテソフトバンク201543
ヘルナンデスソフトバンク202429
張誌家西武200228
松山晋也中日202527

同一シーズンの主な記録例。ヘルナンデスはシーズン初登板からの29イニング、松山はセ・リーグ新記録の27イニング。佐々木朗希のシーズンまたぎ36イニングは次の段落で別に扱う[1][2][18][19]。

シーズンをまたいだ例も含めると

佐々木朗希(ロッテ)は、2021年10月14日のオリックス戦2回裏から、2022年4月17日の日本ハム戦2回表まで36イニング連続で三振を奪った。前年の終盤11イニングと翌年の開幕から25イニングをつないだ記録で、4月10日の完全試合もこの途中に含まれる。見落とせない長期継続例だが、サファテの43には届かない[14][15][17]。

NPBの2022年記録回顧には、その年の3月27日から4月17日までの「25イニング連続奪三振」が掲載されている。本記事では、この同一シーズンの公式掲載値と、前年分をつないだ36イニングを区別する。36を同一シーズンの記録の表に混ぜない[15][17]。

途切れた4月17日の3回表は、ヌニエスが左飛、宇佐見が捕邪飛、淺間が左飛。三振を一つも奪えず、3者凡退に抑えながら連続が止まった。失点も安打も許す必要がないところが、この記録ならではの終わり方である[16]。

調査範囲と数値の扱い

対象はNPB一軍公式戦で、一人の投手が自分の登板した各回に1個以上の奪三振を記録した連続イニング。試合またぎを含み、シーズンまたぎの事例も確認した。継投によるチーム記録、二軍、オープン戦、オールスター、クライマックスシリーズ、日本シリーズ、MLBの記録は対象外とする。

43イニングの認定はNPBの表彰資料、開始・終了の経緯は公式試合成績と試合速報を優先した。41登板・41投球回・77奪三振と月別内訳は、専門記録サイトの登板別成績を本記事で再集計した値である。途中登板のあった7月21日・8月29日と、最後の9月10日の投球内容は公式経過で照合した[1][5][6][7][8][13]。

2024年・2025年のNPB記録回顧と、2026年9月30日の記録解説でも最長として挙げられる43イニングを確認した。シーズンまたぎを含めた全投手の歴代順位を網羅的に再集計したものではない。資料確認日:2026年10月16日[18][19][20]。

何がすごいのか

  • 試合をまたいで41登板。4カ月以上、三振を一つも奪えない回を挟まなかった[7][13]。
  • 従来の最長28イニングを15イニング上回った。記録が止まるまで更新を続けた[2][11]。
  • 始まりは2ランを浴びた回、最後は打者1人への3球三振。無失点や完投とは別の角度で、投手の継続力が見える[3][4][7]。

出典