詳細
1974年9月29日、後楽園球場で行われた日本ハム-南海のダブルヘッダー第2試合。高橋博士は「3番・一塁」で先発し、2回に捕手、3回に三塁、4回に遊撃、5回に二塁、6回に左翼、7回に中堅、8回に右翼へ移動した。9回表にはマウンドへ上がり、南海の投手・野崎恒男を中飛に打ち取ったところで渡辺秀武と交代。これで9つすべての守備位置を1試合で守り切った。
ただし、この記録は通常の作戦の中で偶然生まれたものではない。当時の日本ハムは最下位、南海も後期2位が決まっており、日本ハムの本拠地最終戦。球団側がファンサービスとして企画したもので、週刊ベースボールでは当時の球団社長・三原脩の発案とされている。そのため「究極のユーティリティー記録」である一方、競技上の必要性だけで生まれた記録とは性格が異なる。
試合自体は南海が7対0で勝利。南海は初回、門田博光の適時打とロリッチの本塁打などで4点を先制し、2~4回にも1点ずつ追加した。日本ハムは企画に合わせて投手も毎回交代し、9回の高橋と渡辺を含めて10投手を投入。高橋の守備位置を空けるため他の野手も頻繁に動き、出場選手は25人に達した。一方、南海先発・野崎恒男は日本ハム打線を4安打に抑えて完封。高橋自身は打撃で4打数1安打、二塁打1本を記録している。
| チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 南海 | 4 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 | 11 | 0 |
| 日本ハム | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 |
高橋博士が全守備位置を回った当日の公式戦。Hは安打、Eは失策。
南海ホークスの先発オーダー
| 位置 | 選手名 |
|---|---|
| (中) | 島野育夫 |
| (二) | 鶴崎茂樹 |
| (右) | 門田博光 |
| (左) | R.ロリッチ |
| (一) | 佐藤道郎 |
| (三) | 柏原純一 |
| (遊) | 定岡智秋 |
| (捕) | 松本芳之 |
| (投) | 野崎恒男 |
日本ハムファイターズの先発オーダー
| 位置 | 選手名 |
|---|---|
| (中) | 島津佳一 |
| (右) | 千藤三樹男 |
| (一) | 高橋博士 |
| (捕) | 大沢勉 |
| (左) | 岡持和彦 |
| (遊) | 相本和則 |
| (三) | 八重沢憲一 |
| (投) | 鵜飼克雄 |
| (二) | 新屋晃 |
高橋は3番・一塁で先発。南海は野崎恒男、日本ハムは鵜飼克雄が先発投手だった。日本ハムはこの後、守備位置を毎回組み替えながら多数の選手を投入した。南海の佐藤道郎は打席に立つ前に代打・相羽欣厚へ交代している。
| 回 | 守備位置 | 確認できるプレー・補足 |
|---|---|---|
| 1回 | 一塁 | 3番・一塁で先発 |
| 2回 | 捕手 | 島野育夫の盗塁を刺す |
| 3回 | 三塁 | 内野の左側へ移動 |
| 4回 | 遊撃 | 門田博光のゴロを処理 |
| 5回 | 二塁 | 内野4ポジション目 |
| 6回 | 左翼 | ここから外野へ |
| 7回 | 中堅 | 鶴崎茂樹の飛球を捕球 |
| 8回 | 右翼 | 野手8ポジションを完了 |
| 9回 | 投手 | 野崎恒男を中飛に打ち取り交代 |
| 回 | 投手 | 投球回 |
|---|---|---|
| 1回 | 鵜飼克雄 | 1回 |
| 2回 | 皆川康夫 | 1回 |
| 3回 | 保坂英二 | 1回 |
| 4回 | 三浦政基 | 1回 |
| 5回 | 野村収 | 1回 |
| 6回 | 宇田東植 | 1回 |
| 7回 | 森中通晴 | 1回 |
| 8回 | 江田幸一 | 1回 |
| 9回 | 高橋博士 → 渡辺秀武 | 1/3回 → 2/3回 |
NPBは「1試合で守った守備位置数」の歴代順位を公式ランキングとして公表しておらず、今回確認した資料だけではレギュラーシーズンの明確な「2位」を特定できなかった。そのため、2位とは断定せず、通常の勝負の中で複数ポジションを守った実例を参考として挙げる。
| 年月日 | 選手 | 守備位置 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 2017年7月1日 | 大城滉二(オリックス) | 遊撃 → 三塁 → 二塁 | 西武戦で3カ所を守り、打っても4打数3安打2打点。オリックスは4-2で勝利。 |
これは「歴代2位」の認定ではなく、企画性の薄い通常の公式戦で、戦術上の守備変更によって3ポジションを守った比較例。高橋の9カ所がいかに別格かを見るための参考として掲載。
1試合ではなく「現役通算」なら、五十嵐章人が野手として8守備位置を経験した後、2000年に投手としても登板し、通算で全9ポジション出場を完成させている。高橋の「1試合で全9カ所」とは別種の記録なので混同しない。