最も低いチーム順位から選ばれたシーズンMVP

MVPは優勝チームから選ばれるというルールはない。チーム事情に関係なく、そのシーズンで一番の成績を残した者にふさわしい。

一般的には?

シーズンMVPは記者投票で決まり、現在の方式では1位票5点、2位票3点、3位票1点として集計される。球団順位そのものに点を加減する仕組みではないため、優勝球団以外の選手も受賞できる[4]。それでも実際には優勝球団の主力が選ばれることが多く、下位球団からの受賞はかなり例外的だ。

答え

MVP受賞者の所属球団・最低順位6位

答えは6位。該当するのは、1949年の藤村富美男(大阪タイガース)と、2013年のW.バレンティン(東京ヤクルトスワローズ)の2例である。ただし1949年の大阪は8球団中6位で、2013年のヤクルトは6球団中6位の最下位だった[1][2]。

年
1949年 2013年
選手
藤村富美男(1949年) W.バレンティン(2013年)
チーム
大阪タイガース(1949年) 東京ヤクルトスワローズ(2013年)
カテゴリ
シーズン・順位

詳細

◇結論の整理

「所属球団の順位」という数字だけで見ると、最低は6位で2例ある。1949年の藤村富美男は8球団制の6位で、下に2球団がいた。一方、2013年のW.バレンティンは6球団制の6位で、そのまま最下位である[1][2]。同じ「6位」でも、記録の意味は少し違う。

所属球団の順位
年選手所属球団球団順位位置づけ
1949藤村富美男大阪タイガース6位/8球団下に2球団
2013W.バレンティン東京ヤクルトスワローズ6位/6球団最下位

なお、2013年のバレンティンは「最下位球団からのMVP」としては両リーグを通じて史上初と当時報じられた[7]。したがって「順位の数字の最低」は藤村とバレンティンの6位タイ、「最下位球団から」という条件ではバレンティンが最初の例となる。

◇1949年 藤村富美男

1949年、大阪タイガースは65勝69敗3分、勝率.485で8球団中6位。優勝した読売ジャイアンツとは20.5ゲーム差だった[1]。それでも藤村は打率.332、187安打、46本塁打、142打点を記録し、本塁打王と打点王の二冠。NPBの年度別成績でも最優秀選手として掲載されている[1]。

藤村富美男の成績
試合打率安打本塁打打点盗塁塁打
137.3321874614212366

※1949年の46本塁打は、それまでのシーズン記録25本を大きく更新したと野球史記事で紹介されている[6]。

1949年の順位表
順位球団勝敗分勝率差
1読売ジャイアンツ85481.639--
2阪急ブレーブス69643.51916.0
3大映スターズ67652.50817.5
4南海ホークス67671.50018.5
5中日ドラゴンズ66683.49319.5
6大阪タイガース65693.48520.5
7東急フライヤーズ64731.46723.0
8大陽ロビンス52810.39133.0

◇他のMVP候補になり得た選手

当時の投票全順位をNPBのオンライン一次資料では確認できないため、ここでは「公式の次点順位」と断定せず、優勝した巨人の有力候補として野球史記事が挙げる3選手を示す[6]。

選手球団主な成績ポイント
藤本英雄読売ジャイアンツ24勝7敗、防御率1.94、勝率.774投手陣の中心。防御率・勝率リーグ1位[1]
千葉茂読売ジャイアンツ打率.307、15本塁打、121得点優勝チームのリードオフマン[1][6]
川上哲治読売ジャイアンツ打率.330、24本塁打、129打点打率3位、129打点[1][6]

チーム成績では巨人が圧倒的だったが、藤村の個人成績はそれを押し切るほど突出していた。特に当時の本塁打記録を大幅に更新したことが、6位球団からの受賞を説明する大きな材料になる[6]。

◇2013年 W.バレンティン

2013年、東京ヤクルトスワローズは57勝83敗4分、勝率.407でセ・リーグ6位。優勝した巨人とは28.5ゲーム差だった[2]。バレンティンは130試合で打率.330、60本塁打、131打点、出塁率.455、長打率.779を記録[3]。60本塁打は2025年シーズン終了時点でもNPBのシーズン最多記録である[5]。

バレンティンの成績
試合打率本塁打打点四球出塁率長打率
130.33060131103.455.779
2013年セ・リーグ順位表
順位球団勝敗分勝率差
1読売ジャイアンツ84537.613--
2阪神タイガース73674.52112.5
3広島東洋カープ69723.48917.0
4中日ドラゴンズ64773.45422.0
5横浜DeNAベイスターズ64791.44823.0
6東京ヤクルトスワローズ57834.40728.5

◇MVP投票

この年は「最下位だから僅差で特例的に選ばれた」という受賞ではない。NPB公式の投票結果では、バレンティンが1位票200、合計1135点。2位の村田修一419点、3位の阿部慎之助391点に大差をつけた[4]。

順位選手球団1位票点数主な成績
1W.バレンティンヤクルト2001135.330、60本、131打点[3]
2村田修一巨人34419.316、25本、87打点[3]
3阿部慎之助巨人31391.296、32本、91打点[3]
4西村健太朗巨人4110優勝巨人の救援投手
5T.ブランコDeNA0100.333、41本、136打点[3]
6前田健太広島19015勝7敗、防御率2.10[2]

◇記録更新と史上初

9月15日の阪神戦では、1回に56号、3回に57号を放ち、1試合の中で従来のシーズン最多本塁打記録を更新した[8]。最終的に60本まで伸ばし、NPBからコミッショナー特別表彰も受けている。最下位球団からのMVP選出は史上初と報じられた[7]。

同じヤクルトでは新人の小川泰弘も16勝4敗、防御率2.93で新人王を獲得し、MVP投票でも21点を得た[2][4]。最下位球団でありながら、個人表彰級の成績を残した選手が複数いたシーズンでもあった。

確認範囲は、NPBの1937年以降の最優秀選手・年度別成績と、2013年の公式投票結果。1949年の投票詳細はオンライン一次資料で確認できないため、候補欄は二次資料の記述に基づき「有力候補」として整理した。確認日:2026年10月5日。

何がすごいのか

  • 所属球団順位の最低は6位。1949年と2013年の2例だけで、さらに2013年は6球団中6位の最下位だった。
  • 1949年の藤村は当時の本塁打記録を大幅更新。2013年のバレンティンは60本塁打で現在もNPBシーズン記録を保持する。
  • 2013年のMVP投票はバレンティン1135点、2位419点。チーム順位の不利を「僅差で乗り越えた」のではなく、圧倒的な個人成績で大差受賞した。

出典