概要
日本プロ野球のシーズンMVP受賞者から、受賞年に主要打撃タイトルを獲得していない選手を取り上げる。通算のタイトル歴とは区別する。
打撃タイトルは、それぞれの部門で最も優れた成績を残した選手に贈られる。一方、MVPは記者投票による表彰で、どれか一部門の首位であることを条件としない。複数の打撃成績とチームでの役割を合わせて、その年の評価を考える[A1][A2]。
最終更新日:
主要打撃タイトルに手が届かなくても、攻撃の中心であり続けた。遊撃手と主将の役割を担いながら、優勝へ導いた一年を成績と当時の言葉から読む。
日本プロ野球のシーズンMVP受賞者から、受賞年に主要打撃タイトルを獲得していない選手を取り上げる。通算のタイトル歴とは区別する。
打撃タイトルは、それぞれの部門で最も優れた成績を残した選手に贈られる。一方、MVPは記者投票による表彰で、どれか一部門の首位であることを条件としない。複数の打撃成績とチームでの役割を合わせて、その年の評価を考える[A1][A2]。
坂本勇人。2019年、読売ジャイアンツの遊撃手として、初のセ・リーグMVPを受賞した。全143試合に出場し、打率.312、40本塁打、94打点、173安打。主要打撃タイトルは獲得しなかったが、主に二番打者を務め、主将として5年ぶりのリーグ優勝を果たしたチームを支えた[A1][A3][A7]。
ここでいう「無冠」は、MVP受賞年に打率・安打・本塁打・打点・出塁率・盗塁の主要打撃6部門のタイトルを獲得していない、という意味である。坂本は同年、遊撃手のベストナインとゴールデン・グラブ賞を受賞している。選考賞も通算タイトル歴もないという意味ではない[A1][A8]。
143試合、639打席。打率3割を保ちながら、40本塁打と77四球を記録した。出塁率は.396、長打率は.575。40本塁打と94打点は当時の自己最多であり、長打と出塁の両方を備えたシーズンだった[A3][A7]。
| 年 | 選手名 | 球団 | 試合 | 打席 | 打数 | 得点 | 安打 | 二塁打 | 三塁打 | 本塁打 | 塁打 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2019 | 坂本勇人 | 巨人 | 143 | 639 | 555 | 103 | 173 | 26 | 0 | 40 | 319 |
2019年の一軍公式戦。各成績は独立した列で掲載[A3]。
| 選手名 | 打点 | 四球 | 死球 | 三振 | 盗塁 | 盗塁刺 | 犠打 | 犠飛 | 併殺打 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 坂本勇人 | 94 | 77 | 2 | 123 | 5 | 3 | 3 | 2 | 9 | .312 | .396 | .575 | .971 |
上の表と同じシーズン。OPSは公式表示の出塁率.396+長打率.575から計算した参考値[A3]。
本塁打はソトに3本及ばず、安打は大島洋平にわずか1本届かなかった。坂本は本塁打と安打で2位、打率で5位、打点で4位タイ、出塁率で4位だった。打率・出塁率は規定打席以上の公式順位で比較する[A4][A5][A6][A9]。
| 順位 | 選手名 | 球団 | 打率 |
|---|---|---|---|
| 1 | 鈴木誠也 | 広島 | .335 |
| 2 | ビシエド | 中日 | .315 |
| 3 | 糸井嘉男 | 阪神 | .314 |
坂本は.312で5位。大島も3桁表示では.312だが、実数では大島174÷558、坂本173÷555となり、大島が4位[A4][A6]。
| 順位 | 選手名 | 球団 | 本塁打 |
|---|---|---|---|
| 1 | ソト | DeNA | 43 |
| 2 | 坂本勇人 | 巨人 | 40 |
| 3 | 村上宗隆 | ヤクルト | 36 |
坂本は2位。首位との差は43−40=3本[A4]。
| 順位 | 選手名 | 球団 | 打点 |
|---|---|---|---|
| 1 | ソト | DeNA | 108 |
| 2 | 山田哲人 | ヤクルト | 98 |
| 3 | 村上宗隆 | ヤクルト | 96 |
坂本は94打点で岡本和真と4位タイ[A9]。
| 順位 | 選手名 | 球団 | 安打 |
|---|---|---|---|
| 1 | 大島洋平 | 中日 | 174 |
| 2 | 坂本勇人 | 巨人 | 173 |
| 3 | ビシエド | 中日 | 168 |
坂本は2位。首位との差は174−173=1安打[A4]。
| 順位 | 選手名 | 球団 | 出塁率 |
|---|---|---|---|
| 1 | 鈴木誠也 | 広島 | .453 |
| 2 | 糸井嘉男 | 阪神 | .403 |
| 3 | 山田哲人 | ヤクルト | .401 |
坂本は.396で4位[A5]。
| 順位 | 選手名 | 球団 | 盗塁 |
|---|---|---|---|
| 1 | 近本光司 | 阪神 | 36 |
| 2 | 山田哲人 | ヤクルト | 33 |
| 3 | 大島洋平 | 中日 | 30 |
坂本は5盗塁。主要打撃6部門の確認として掲載[A3][A4]。
「無冠」という言葉だけでは、この年の打撃の強さを捉えきれない。主要打撃6部門とは別に、坂本の長打率.575と319塁打はリーグ1位だった。40本塁打を含む長打の量が、タイトル一覧に現れない首位の成績を生んでいた[A1][A4]。
| 順位 | 選手名 | 球団 | 長打率 |
|---|---|---|---|
| 1 | 坂本勇人 | 巨人 | .575 |
| 2 | 鈴木誠也 | 広島 | .565 |
| 3 | 山田哲人 | ヤクルト | .560 |
参考の成績順位。2019年の主要打撃タイトルに長打率と塁打の表彰はない[A1][A4]。
| 順位 | 選手名 | 球団 | 塁打 |
|---|---|---|---|
| 1 | 坂本勇人 | 巨人 | 319 |
| 2 | 山田哲人 | ヤクルト | 291 |
| 3 | ソト | DeNA | 286 |
参考の成績順位。2019年の主要打撃タイトルに長打率と塁打の表彰はない[A1][A4]。
巨人は77勝64敗2分、勝率.546で優勝し、2位DeNAに5.5ゲーム差をつけた。チーム得点663と本塁打183はリーグ最多。チーム打率は.257で2位、防御率は3.77で4位だった。打線の得点力が際立つチームの中で、坂本は本塁打・安打・得点・塁打のいずれも球団最多だった[A6][A10]。
| 順位 | チーム名 | 試合 | 勝利 | 敗北 | 引分 | 勝率 | ゲーム差 | 打率 | 本塁打 | 得点 | 防御率 | 失点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 巨人 | 143 | 77 | 64 | 2 | .546 | ― | .257 | 183 | 663 | 3.77 | 573 |
| 2 | DeNA | 143 | 71 | 69 | 3 | .507 | 5.5 | .246 | 163 | 596 | 3.93 | 611 |
| 3 | 阪神 | 143 | 69 | 68 | 6 | .504 | 6.0 | .251 | 94 | 538 | 3.46 | 566 |
| 4 | 広島 | 143 | 70 | 70 | 3 | .500 | 6.5 | .254 | 140 | 591 | 3.68 | 601 |
| 5 | 中日 | 143 | 68 | 73 | 2 | .482 | 9.0 | .263 | 90 | 563 | 3.72 | 544 |
| 6 | ヤクルト | 143 | 59 | 82 | 2 | .418 | 18.0 | .244 | 167 | 656 | 4.78 | 739 |
2019年セ・リーグ公式戦最終成績。ゲーム差は首位との差。球団名は略称[A6]。
坂本はMVP投票で261の1位票を集め、1403点を獲得した。有効投票299の約87.3%が坂本を1位に推した計算になる。2位は、最多勝利・勝率第一位・最多奪三振の三つの投手タイトルを獲得した同僚の山口俊。坂本と山口の差は738点だった[A1][A2]。
| 順位 | 選手名 | 球団 | 1位票 | 2位票 | 3位票 | 点数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 坂本勇人 | 巨人 | 261 | 32 | 2 | 1403 |
| 2 | 山口俊 | 巨人 | 24 | 162 | 59 | 665 |
| 3 | 丸佳浩 | 巨人 | 7 | 54 | 109 | 306 |
| 4 | 鈴木誠也 | 広島 | 3 | 14 | 20 | 77 |
| 5 | ソト | DeNA | 1 | 7 | 35 | 61 |
得票上位5人。1位5点・2位3点・3位1点。投票総数300、有効投票数299。1位票割合=261÷299×100、点差=1403−665。点数と票数は区別する[A2]。
投票結果は、記者それぞれの選出理由までは示していない。以下は公式成績と当時の記事からの推察である。まず、打率・本塁打・安打・出塁率のいずれでも上位に入り、長打率では首位だったことが、打者としての総合評価を支えたと考えられる。最多安打との差は1本、本塁打王との差は3本であり、「無冠」は打撃成績が低かったことを意味しない[A2][A3][A4][A5]。
次に、二番打者でありながら40本塁打を放った働きである。NPBの受賞報告は、坂本を主に「攻撃的二番」として打線をけん引した選手と紹介している。出塁率.396で打線をつなぐと同時に、自ら長打で得点を生む役割が評価されたと読むことができる。ただし、打順だけをMVPの決め手と断定することはできない[A3][A7]。
さらに、全143試合に出場した継続性と、遊撃手・主将として優勝チームを支えた役割である。NPBは主将としてチームの先頭に立ち続けたことを記し、同年には遊撃手のベストナインとゴールデン・グラブ賞も受賞した。これらは投票による評価の事実であり、守備の貢献を数値で断定する根拠とは分けたい。打撃の強さに、継続性とチーム内の役割が重なったシーズンだったと考えられる[A1][A3][A7][A8]。
おすすめシーズン・順位最も低いチーム順位から選ばれたシーズンMVP坂本は、セ・リーグの遊撃手として初めてMVPに選ばれた。NPBの受賞報告では、本人が長い歴史の中での受賞を誇りに思うと語っている。「初」はセ・リーグの遊撃手についてのもので、NPB全体で初という意味ではない[A7]。
9月27日のDeNA戦、東京ドームで坂本は四回に中川虎大から40号ソロを放った。同じ回に阿部慎之助も7号ソロを打ち、巨人は6対4で勝利。坂本は東京ドームMVP賞の受賞コメントで、阿部の記念試合で40号を打てたことが、その年で最も印象に残っていると振り返った[A11][A12]。
東京ドームでの打撃成績も際立っていた。球場独自のMVP賞の発表によると、64試合すべてに出場し、247打数84安打、打率.340、22本塁打、49打点。リーグのMVPとは別の表彰であり、本拠地での活躍に光を当てた賞だった[A12]。
| 選手名 | 試合 | 打数 | 安打 | 打率 | 本塁打 | 打点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 坂本勇人 | 64 | 247 | 84 | .340 | 22 | 49 |
2019年の東京ドームでの一軍公式戦。シーズン全体の成績とは分けて掲載[A12]。
11月26日の日刊スポーツは、坂本が40本塁打を自分でも想像していなかったと語ったことを伝えている。本人は、向上を求め続けることで不可能と思ったことも可能になるとし、若い選手にもその姿勢を持ってほしいと話した。記録の大きさを自身の驚きで終わらせず、後輩への言葉にしたところに、主将としての一面が表れていると読める[B1]。
確認日は2026年10月12日。対象は2019年セ・リーグ一軍公式戦で、ポストシーズンや代表戦は成績表に含めない。「無冠」は受賞年の主要打撃6部門に限定する。選出理由は成績・受賞報告・当時の報道からの推察で、投票者全員の理由を確定したものではない。★は記事で注目する選手・チームの指定。
本塁打も打点も、タイトル争いの上位にいながら頂点には届かなかった。それでもMVPに選ばれた打者の一年を、各部門の順位と優勝への働きから追う。
長打の数だけでは伝わらない、捕手の働きがある。打線の中軸と投手陣の支えを兼ね、全試合に出場して優勝に貢献した一年をたどる。
強力打線の中軸を担いながら、捕手として最後までグラウンドに立ち続けた。個人タイトルに届かなくても、攻守の働きでMVPに選ばれた一年を追う。
新しいリーグでも打線の中心を担い、成績タイトルなしでMVPに選ばれた打者がいる。移籍初年度の成績と優勝への働きから、その選出を考える。