最下位に負け越したリーグ優勝チーム

リーグを制したチームなら、最下位チームはカモにしているはず。ところが、年間順位とは逆に、直接対決では最下位に負け越した王者もいる。

一般的には?

同じリーグの相手との年間対戦が25試合なら、引き分けなしで13勝12敗が最小の勝ち越しになる。ただし、優勝は全対戦の合計で決まるため、特定の相手に負け越しても成立する。優勝チーム対最下位という組み合わせにも、その例外は現れる。順位表では大きな差があっても、直接対決の相性まで同じとは限らない。

同年の優勝チームの当該相手以外への勝率
.609

答え

優勝チーム/最下位チームと直接対決の成績東京ヤクルトスワローズ/中日ドラゴンズ(10勝14敗1分) 読売ジャイアンツ/横浜ベイスターズ(11勝15敗)

確認できる代表例は、2022年の東京ヤクルトスワローズ/中日ドラゴンズ(10勝14敗1分)と、1994年の読売ジャイアンツ/横浜ベイスターズ(11勝15敗)。括弧内は全て優勝チームから見た年間対戦成績。以下では、15ゲーム差の1位と6位になった2022年を中心に、その中身をたどる[1][14][15]。

年
2022年 1994年
チーム
東京ヤクルトスワローズ/中日ドラゴンズ(10勝14敗1分) 読売ジャイアンツ/横浜ベイスターズ(11勝15敗)
カテゴリ
シーズン・順位

普通と比べると

同年の優勝チームの当該相手以外への勝率
.609
優勝チームの最下位相手への勝率
.417

最下位以外には勝率約60.9%、最下位には約41.7%。約19.2ポイント低い。

2022年のヤクルトの全成績80勝59敗4分から中日戦10勝14敗1分を除き、残る118試合(交流戦を含む)は70勝45敗3分。勝率は引き分けを分母から除き、70÷115=.608695…、中日戦は10÷24=.416666…。差は約19.2パーセントポイント。割合なので棒グラフにはしない。1994年の比較とは混ぜない[1]。

詳細

順位と相性が逆転した2022年

ヤクルトは80勝で2位DeNAに8ゲーム差をつけて優勝。中日は66勝75敗2分で最下位となり、首位とのゲーム差は15だった。ところが両者の直接対決は、中日が14勝10敗1分。勝利数でも負け数でも、年間の順位関係がそのままカードの成績にはならなかった[1]。

順位球団試合勝利敗戦引分勝率ゲーム差
1ヤクルト14380594.576--
2DeNA14373682.5188.0
3阪神14368714.48912.0
4巨人14368723.48612.5
5広島14366743.47114.5
6中日14366752.46815.0

2022年セ・リーグの最終順位。★はヤクルトと中日を注目行に指定。球団名は表内のみ略称[1]。

守備部門
球団守備率失策捕逸
DeNA.988647
中日.988665
ヤクルト.987695
広島.986738
巨人.985828
阪神.984863

NPB公式の掲載順。守備率は表示桁を合わせた[4]。

投手力のある最下位と長打力のある王者

中日は打率.247で4位、414得点・62本塁打はともにリーグ最少だった。一方で防御率3.28は2位。最下位だから投打ともに最弱というチームではなかった。ヤクルトは619得点・174本塁打でともにリーグ最多ながら、防御率は3.52。この違いから、中日の投手が機能すれば順位差に反して接戦に持ち込める余地があったと考えられる。ただし、球場や起用の影響も含む年間の数字だけで、相性の原因を確定することはできない[2][3]。

6球団の直接対決
球団ヤクルトDeNA阪神巨人広島中日交流戦
ヤクルト—16勝9敗13勝11敗1分11勝13敗1分16勝8敗1分10勝14敗1分14勝4敗
DeNA9勝16敗—16勝9敗13勝11敗1分8勝17敗18勝6敗1分9勝9敗
阪神11勝13敗1分9勝16敗—14勝10敗1分9勝14敗2分13勝12敗12勝6敗
巨人13勝11敗1分11勝13敗1分10勝14敗1分—13勝12敗13勝12敗8勝10敗
広島8勝16敗1分17勝8敗14勝9敗2分12勝13敗—10勝15敗5勝13敗
中日14勝10敗1分6勝18敗1分12勝13敗12勝13敗15勝10敗—7勝11敗

左端の球団から見た成績。交流戦は他リーグ6球団との合計で、リーグ内の対戦表とは別枠。各行の直接対決と交流戦を足して、順位表の勝敗に一致することを確認した[1]。

◇苦手カードを他の対戦で補った

ヤクルトは交流戦を含む6月に19勝4敗と大きく勝ち越し、優勝争いを有利に進めた。7月は7勝13敗と失速したが、9月25日のDeNA戦に1対0で勝って連覇を決めた。前半に積んだ白星が、主力を欠いた夏と苦手カードの負け越しを支えたと整理できる[7][16]。

ヤクルトは中日戦で4つ、巨人戦で2つ負け越したが、DeNA戦で7つ、広島戦で8つ、阪神戦で2つ勝ち越した。さらに交流戦は全6球団に勝ち越して14勝4敗。全体では貯金21まで積み上げた。中日はヤクルトと広島に勝ち越した一方、DeNAには6勝18敗1分と12の負け越し。王者に勝てることと、全カードを合わせて上位になることは別だった[1]。

93対91なのに10勝14敗
球団勝利敗戦引分得点失点
ヤクルト101419391
中日141019193

25試合の対戦成績。得点・失点はNPBの各試合スコアから再集計。ヤクルトの対中日打率は.234で、通年の.250を下回った[1][2][5][7]。

ヤクルトは中日戦で合計93得点、91失点と2点のプラスだったが、勝利数では4つ下回った。4月19日の12対4、6月23日の10対0、8月2日と9月2日の5対0など、大差の勝利で得失点差を広げた一方、1点差の5試合では1勝4敗。このカードの勝敗の差は、1点差試合の差だけでも3つあった。合計得点の多い側が、試合数でも勝ち越すとは限らない[7]。

月別の対戦経過
期間ヤクルト 勝ヤクルト 敗引分ヤクルト 得点ヤクルト 失点
4月2302427
5月12034
6月210185
7月020410
8月3202618
9月2411827

ヤクルトから見た月別成績。中止・順延した試合は、実際の開催日に数えた[7]。

◇高橋宏斗に4戦4敗

最も具体的な相性の要素は、高卒2年目の高橋宏斗だった。ヤクルト戦に4度先発し、4度とも勝利投手。合計24回1/3で7自責点、28奪三振、防御率は7×9÷(24+1/3)=約2.59。高橋のシーズン成績は6勝7敗、防御率2.47で、年間6勝のうち4勝を優勝チームから挙げていた[8][17]。

日付球場中日から見たスコア投球回奪三振失点自責点
4月7日神宮11対36533
4月20日バンテリンドーム4対16811
9月4日神宮6対35 1/31033
9月22日神宮3対07500

全て2022年、高橋宏斗が勝利投手。表示した投球回は本人の投球回。防御率の集計では1/3回を小数の0.1回として扱わない[8]。

プロ初勝利となった4月7日は、本人も2回に2点適時打を放った。9月22日の最終対戦では7回1安打無失点と抑え、中日の14勝目を決めた。中日の年間順位だけでは見えない、王者相手に働いた選手単位の強みだった[8]。

◇5月10日の完封リレー

5月10日はA.マルティネスの4回のソロ本塁打による1点を、小笠原が6回無失点、祖父江・ロドリゲス・R.マルティネスが各1回無失点で守った。両軍とも7安打だったが、中日が1対0で勝利。ヤクルトの長打力が試合全体を支配する前に、先発と救援で競り勝った具体例といえる[9]。

◇7月の主力離脱だけでは説明しきれない

ヤクルトは7月9日と10日に監督・主力選手らの新型コロナ陽性を相次いで発表し、山田、長岡、青木、中村、塩見らの不在が重なった。7月13日と14日の中日戦には敗れ、14日は木下に4打点を許した。戦力を欠いた時期が、このカードの2敗に重なったことは確認できる[10][11][12]。

ただし、中日には4月と5月の段階ですでに3勝5敗と負け越し、9月も2勝4敗1分だった。7月の離脱だけを全季の負け越しの原因とはできない。投手ごとの相性や、接戦での結果の偏りも合わせて見る必要がある[7][8]。

◇村上の記録が生まれた相手でもある

中日が全ての試合でヤクルト打線を封じたわけではない。村上宗隆が5打席連続本塁打のプロ野球新記録を完成させた8月2日の相手は中日だった。前日の試合ではなく、直前の阪神戦での3打席連発に、この日の38号ソロと39号2ランをつないだ記録で、ヤクルトは5対0で勝っている。強烈な勝ち試合と、年間カードの負け越しが同居した[13]。

1994年にも起きた順位と相性の逆転

もう一つの例は、巨人と横浜。巨人は70勝60敗で優勝し、横浜は61勝69敗で最下位だったが、巨人から見た対横浜は11勝15敗だった。こちらの首位と最下位の差は9ゲーム。横浜は543得点・535失点と得失点差がプラスで、打率.261もリーグ2位だった。最下位というだけで打力まで低いと判断できない例である[14][15]。

順位球団試合勝利敗戦引分勝率差打率防御率得点失点本塁打
1巨人13070600.538—.25833.41516483122
2中日13069610.5311.0.25813.45535481108
3広島13066640.5084.0.2764.18585584126
4ヤクルト13062680.4778.0.2504.05486585130
4阪神13062680.4778.0.2563.4350350092
6横浜13061690.4699.0.2613.76543535107

1994年セ・リーグ。阪神とヤクルトは同率4位。打率はNPB公式が区別している表示桁を残した[14]。

球団巨人中日広島ヤクルト阪神横浜
巨人—14勝12敗14勝12敗15勝11敗16勝10敗11勝15敗
中日12勝14敗—15勝11敗14勝12敗13勝13敗15勝11敗
広島12勝14敗11勝15敗—14勝12敗16勝10敗13勝13敗
ヤクルト11勝15敗12勝14敗12勝14敗—16勝10敗11勝15敗
阪神10勝16敗13勝13敗10勝16敗10勝16敗—19勝7敗
横浜15勝11敗11勝15敗13勝13敗15勝11敗7勝19敗—

左端の球団から見た対戦成績。各カード26試合、交流戦は未導入。行合計をNPBの年間勝敗と照合した[14][15]。

◇後半だけなら巨人は横浜に1勝10敗

巨人は7月16日まで横浜に10勝5敗と勝ち越していたが、7月17日以降は1勝10敗。通年の対横浜成績は、この終盤の偏りで11勝15敗へ反転した。優勝は10月8日の中日との最終戦までもつれた。一方、横浜は巨人とヤクルトには勝ち越したものの、阪神には7勝19敗。特定カードの成績が両チームの順位形成に強く影響したことが分かる[15][16]。

なぜ順位差どおりにならなかったのか

2022年は、投手との具体的な相性、1点差試合の勝敗、主力離脱の時期が中日戦の結果に重なった。一方、ヤクルトは他カード、とりわけ交流戦で大きく勝ち越し、総合成績ではリーグの頂点に立った。1994年も、巨人対横浜という1カードの終盤の偏りと、横浜対阪神の大幅な負け越しが、順位と直接対決の逆転を生んでいる。これは確認できた成績と試合経過からの整理で、全ての敗戦を一つの原因へ帰すものではない[1][7][8][15][16]。

記録の範囲と資料の扱い

対象は、6球団のリーグで年間の最終順位が1位と6位となった球団同士の対戦で、優勝チーム側の勝利数が敗戦数を下回ったケース。途中時点の首位・最下位、同率対戦、交流戦の別リーグ最下位、ポストシーズンは対象外とする。掲載した2例は代表例であり、2026年までの全シーズンを独自に全件集計した一覧ではない。「史上唯一」「歴代で最も苦手」とは断定しない。資料確認日:2026年10月12日。

2022年のチーム全体の防御率・自責点はNPB公式を優先した。ヤクルトの球団メディアガイドには通年防御率3.54・自責点509の表示があるが、NPB公式は3.52・506を掲載している。相違の理由は確認できないため、両者を混ぜず、対戦別の得点・打率だけを球団資料から使用した。得点93・失点91はNPBの全25試合のスコアからも再集計し一致した[2][3][5][6][7]。

1994年の阪神とヤクルトは同率4位。対戦表の並びはNPB公式の掲載順(ヤクルト、阪神)を採用し、順位欄は双方4とした[14]。

何がすごいのか

  • 15ゲーム差の優勝チームと最下位チームなのに、カードの勝敗は逆転していた[1]。
  • 合計得点は93対91で優勝チームが上。大量得点と勝利数は一致しなかった[5][7]。
  • 高橋宏斗の年間6勝のうち4勝が優勝チームからの白星だった[8][17]。

出典