最も遅い第1号を打った本塁打王

開幕からかなり経過してからの1号だったが本塁打王になった。とんでもないスロースターターか、それとも何か別の理由があるのか。

一般的には?

近年の本塁打王は、開幕から早い段階で第1号を打っている。2021〜2025年のセ・パ両リーグの本塁打王(同率受賞者を含む13人・シーズン)について、所属球団の開幕から第1号までの試合数を数えると、合計86試合で、平均は約6.6試合目だった。今回も本人が欠場した試合を含み、中止は除き、成立した球団公式戦を数える[V2021][V2022][V2023][V2024][V2025]。

2021〜2025年の本塁打王の第1号平均
約6.6試合目

答え

第1号を打った球団の開幕からの試合数39試合目

確認できた資料で最も遅いのは、2014年のエルネスト・メヒア。埼玉西武ライオンズの開幕39試合目、5月15日の日本ハム戦で第1号を打ち、その年は34本で本塁打王になった[A1][A2][A3][A4][A5][B1]。

年
2014年
選手
エルネスト・メヒア
チーム
埼玉西武ライオンズ
カテゴリ
打撃

普通と比べると

2021〜2025年の本塁打王の第1号平均
約6.6試合目
第1号を打った球団の試合数
39試合目

近年平均より約32.4試合遅い

2021〜2025年の本塁打王を、同率受賞者も1人・1シーズンとして数えた13人・シーズンが対象。第1号を打った所属球団の開幕からの試合数は、15、2、12、7、2、11、4、13、4、13、1、1、1試合目で、合計86÷13=約6.62。表示は約6.6試合目とした。中止は除き、引き分けは1試合として数え、本人が欠場した試合も所属球団の公式戦が成立していれば含める。39−約6.6=約32.4試合[V2021][V2022][V2023][V2024][V2025]。

詳細

出遅れの理由と最初の一発

◇開幕時にはまだ西武の選手ではなかった

メヒアの第1号が遅かった理由は、38試合も打てなかったことではない。西武が入団合意を発表したのは4月30日で、入団会見は5月5日。シーズン途中に加わった新外国人だった[A7][A8]。

そのため、今回の物差しでは「球団39試合目」だが、本人にとってはNPBでの初出場。さらに最初の打席で本塁打を打っている。「本塁打王の最も遅い第1号」であると同時に、本人の打席だけを見れば、これ以上早く打てない第1号でもあった[A1]。

◇39試合目の数え方

期間成立した西武の試合累計
3月28〜30日33
4月1〜30日2528
5月1〜15日1139

NPBの4月カレンダーに掲載された3月の開幕3試合も含めて集計した。5月15日の試合を含めて39試合で、その直前までに38試合が終わっていた。入団前、二軍調整中、本人が一軍で欠場した日も、所属球団の一軍公式戦が成立していればカウントする[A2][A3]。

◇初打席の3球目を左翼席へ

2014年5月15日 日本ハム対西武 札幌ドーム。メヒアは5番・指名打者で先発し、0−1の2回表、先頭打者として上沢直之と対戦した。カウント1−1からの3球目、139キロの直球を左翼席へ運ぶ同点ソロ。日刊スポーツは、日本での初スイングが本塁打になったと伝えている[A1][B2]。

打順位置選手名打数安打本塁打打点三振
5(指)メヒア41111

この日の打席結果は、左本/三ゴロ/空三振/右邪飛。初打席で鮮烈な一発を放ったものの、その後は3打数無安打だった[A1]。

夏に加速したタイトル争い

◇106試合で34本

試合打席打数安打本塁打打点打率長打率出塁率
1064503961153473.290.581.369

メヒアの2014年シーズン成績。出場106試合で34本塁打を放ち、中村剛也とパ・リーグ最多を分け合った。西武の公式発表でも、シーズン途中入団の選手が本塁打王になるのは史上初と紹介されている[A4][A5][A11]。

こちらにも興味があれば打撃規定打席に届かず本塁打王になった選手本塁打王に規定打席は必要ない。それでも、打つ機会の少なさを乗り越えて頂点に立つのは難しい。異例のタイトルを、故障、ライバル、球場、時代背景から読み解く。

◇月別では8月に11本

月試合打率本塁打打点
5月12.44038
6月18.222511
7月22.321816
8月26.2831122
9月25.220611
10月3.41715

月別成績は民間集計NF3から。合計の106試合・34本塁打・73打点はNPBの年度別成績と一致する。5〜6月の8本に対し、7〜8月は19本。後から追いかけた選手が、夏の2か月で一気に本数を積み上げた[B4][A4]。

◇構えを変えて外の球を見極める

9月30日付の週刊ベースボールの記事は、メヒアが日本の配球に対応する過程を紹介している。来日直後の前かがみの構えから、より上体を起こした構えへ変化し、田辺徳雄監督代行は外のボール球を見極めやすくなったと説明した。中村も、内角の球で意識を引きつけてから外へ誘う日本の攻め方への対応に言及している。途中入団からの本塁打王は、長打力に加え、シーズン中の調整によって生まれた[B3]。

◇最後に並んだチームメート

西武のシーズン最終戦は10月3日の楽天戦。メヒアが34本で先行していたところへ、中村が7回に代打で34号の同点3ランを打った。西武はその後勝ち越して7−4で勝利。この日のメヒアに本塁打はなく、2人が34本で並んだままシーズンを終えた[A12][A5]。

パ・リーグ公式メディアは、同一球団の2人が本塁打王を分け合ったのは、1950年の2リーグ制以降で初めてと紹介している。球団が10月8日に掲載したコメントでも、中村は2人での受賞を喜び、メヒアは途中からの加入でタイトルを取れるとは思わなかったと振り返った。中村への敬意や、日本への適応を助けたコーチ・チームメートへの感謝も述べている[B5][A9]。

◇打線の補強と苦しいチーム状況

西武は開幕3連敗で始まり、主力の中村や坂田遼の故障もあった。6月4日に伊原春樹監督が休養し、田辺が監督代行となる。岸孝之のノーヒットノーランや、森友哉の3試合連続本塁打など明るい話題もあったが、最終成績は63勝77敗4分の5位。メヒアの本塁打王は、チームの苦境の中から生まれた個人タイトルだった[A10]。

2014年の主要打撃三部門

◇パ・リーグ

打率

順位選手名球団成績
1糸井嘉男オリックス.331
2銀次楽天.327
3柳田悠岐ソフトバンク.317

本塁打

順位選手名球団成績
1メヒア西武34
1中村剛也西武34
3ペーニャオリックス32

打点

順位選手名球団成績
1中田翔日本ハム100
2中村剛也西武90
2ペーニャオリックス90

打率[L1]/本塁打[A5]/打点[L3]。メヒアの打率.290、73打点は、いずれもトップ3ではない。打率上位3人と本塁打上位3人が重ならず、首位打者と本塁打王は異なる顔ぶれだった[A4]。

◇セ・リーグ

打率

順位選手名球団成績
1マートン阪神.338
2菊池涼介広島.325
3山田哲人ヤクルト.324

本塁打

順位選手名球団成績
1エルドレッド広島37
2バレンティンヤクルト31
3山田哲人ヤクルト29

打点

順位選手名球団成績
1ゴメス阪神109
2エルドレッド広島104
3雄平ヤクルト90

打率[L4]/本塁打[L5]/打点[L6]。両リーグとも「順位が3位以内」の全員を掲載。同率一位・二位は公式順位を保ち、打率は規定打席到達者のランキングを使う。

歴代比較と近年の追加確認

◇日付ではなく球団の試合数

年選手名球団第1号の日球団の試合数最終本塁打
2014メヒア西武5月15日39試合目34
1943古川清蔵名古屋7月1日36試合目4
1943加藤正二名古屋6月29日35試合目4
1957佐藤孝夫国鉄5月14日32試合目22
2018ソトDeNA5月6日29試合目41

2018年12月20日の日刊スポーツ掲載表の上位5人。表の注記も、本人の出場数ではなくチームの試合数としている。古川の7月1日は暦上ではメヒアより遅いが、開幕からの試合数は36。日付だけで比べると、この問いへの答えが変わってしまう[B1]。

◇2019〜2025年の本塁打王も照合

年選手名第1号の日球団の試合数出典
2019ソト4月3日5試合目[V2019]
2019山川穂高3月29日1試合目[V2019]
2020岡本和真6月21日3試合目[V2020]
2020浅村栄斗6月23日4試合目[V2020]
2021岡本和真4月11日15試合目[V2021]
2021村上宗隆3月27日2試合目[V2021]
2021杉本裕太郎4月8日12試合目[V2021]
2022村上宗隆4月1日7試合目[V2022]
2022山川穂高3月26日2試合目[V2022]
2023岡本和真4月12日11試合目[V2023]
2023近藤健介4月4日4試合目[V2023]
2023浅村栄斗4月18日13試合目[V2023]
2023ポランコ4月4日4試合目[V2023]
2024村上宗隆4月14日13試合目[V2024]
2024山川穂高3月29日1試合目[V2024]
2025佐藤輝明3月28日1試合目[V2025]
2025レイエス3月28日1試合目[V2025]

同率受賞者を含む17人・シーズンについて、第1号の試合を全打席記録から探し、NPB公式試合結果の「1号」と照合した。球団の試合数はNPB公式カレンダーで開幕から数えた。この期間で最も遅いのは2021年の岡本和真の15試合目で、39試合目を上回る例はない[V2019][V2020][V2021][V2022][V2023][V2024][V2025]。

◇集計の範囲と確認日

対象は1936〜2025年の日本プロ野球の本塁打王。当時のシーズン区分は歴代資料に従う。リーグ別の同率一位を認め、一軍のレギュラーシーズンだけを対象とし、オープン戦、二軍戦、オールスター、ポストシーズンは数えない。2026年は進行中のため対象外。確認日は2026年10月6日。

歴代比較は2018年の日刊スポーツ掲載表を基点とし、メヒアの39試合目を公式日程で再集計したうえで、2019〜2025年の受賞者を追加確認した。歴代の全受賞者の初本塁打を独立に全件再集計した調査ではない。したがって本記事は「確認できた資料で最遅」とする。NPBが公式に公表する独立した記録部門としての認定を意味しない[B1][A2][A3]。

出典