詳細
守備に就いた直後、初打席で試合を終わらせた
10回表、加治前は9番・投手の西村健太朗に代わって右翼に入り、先頭の里崎智也の右邪飛を捕球した。その裏、古城茂幸の遊飛で1死となって初打席へ。守備でアウトを一つ取った直後、バットで試合に決着をつけた[1][2]。
◇初出場と初打席は違う日
加治前は1985年4月6日生まれで、当時23歳。6月1日に一軍へ初昇格し、ソフトバンク戦で守備固めとして初出場した。最初の2試合では打席がなく、6月6日の3試合目に初打席を迎えた。当時の記録で初打席本塁打は47人目、うち決勝本塁打は15人目だったが、サヨナラは史上初だった[3][5][12]。
◇10回表に入った打順と守備位置
巨人は10回表、7番・右翼の隠善智也に代えてクルーンを登板させ、9番・投手の西村健太朗の打順に加治前を入れた。加治前は7番ではなく9番の右翼手として出場している[1][2]。
| 回 | 出来事 | 加治前との関係 |
|---|---|---|
| 10回表 | 里崎が初球を右邪飛 | 右翼で捕球し、最初のアウトを取る |
| 10回表 | ズレータが振り逃げで出塁 | クルーンに三振が付くが、アウトは増えない |
| 10回表 | 大松が空振り三振、サブローが見逃し三振 | ロッテを無得点に抑える |
| 10回裏 | 古城が遊飛 | 1死走者なしで9番に打順が回る |
| 10回裏 | 加治前が右本① | 4対3で巨人のサヨナラ勝ち |
クルーンは4打者に対して3奪三振、被安打0。ズレータが振り逃げで出塁したため、3奪三振でも3者凡退ではない。もう一つのアウトは加治前が捕った里崎の右邪飛だった[1][2]。
| 打順 | 投手 | 場面 | 打った球 | 打撃結果 |
|---|---|---|---|---|
| 9 | 川崎雄介 | 10回裏1死走者なし | 1ボール1ストライクからの3球目 外角のチェンジアップ | 右本① |
①は打点。右投げ右打ちの加治前が左腕・川崎の外角チェンジアップを逆方向の右翼席へ運んだ。ロッテ球団の一球速報は1ボール1ストライクからの3球目と記録し、当時の実況を振り返ったニッポン放送の記事とも一致する[2][5]。
加治前は試合後、変化球も頭に置きながら基本は直球を待ち、チェンジアップに反応できたと話している[3]。
◇本塁打を打った瞬間、二打席目はなくなった
3対3の10回裏、走者なしでのソロ本塁打により巨人が4対3で勝利。初打席で初安打・初本塁打・初打点を挙げ、その一打がサヨナラ打になった。加治前のこの日の成績は1打数1安打1本塁打1打点だった[1][2]。
◇祝福の輪と記念球
試合後、先輩選手たちの祝福を受けた加治前は、東海大の先輩でもある原辰徳監督と抱き合った。本人はホームイン前後の記憶が曖昧だったと振り返る。観客が捕った記念球も手元に戻り、謝礼にサイン入り打撃手袋を贈ったという[3]。
◇3点差を追い付き、延長10回につないだ
ロッテは3回に根元俊一のソロとサブローの2点二塁打で3点先制。巨人は4、5、6回に1点ずつ返して同点とし、山口鉄也ら救援4投手がその後の7回を無失点でつないだ。延長10回裏の加治前の一発で4対3のサヨナラ勝ちとなった[1][2]。
| チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | R | H | E |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ロッテ | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 8 | 0 |
| 巨人 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1× | 4 | 6 | 1 |
延長10回、巨人4対3ロッテ。観衆4万3102人、試合時間3時間19分。勝利投手はクルーン(同年初勝利)、敗戦投手は川崎。両軍の先発は野間口貴彦と清水直行。Rは得点、Hは安打、Eは失策を示す[1]。
◇3回の3失点と、中盤の追い上げ
ロッテは3回表2死から根元の1号ソロで先制し、四球と二塁打で走者をためて、サブローの左越え2点二塁打で3対0とした。巨人は4回に小笠原道大の9号ソロ、5回に代打・清水隆行の右邪犠飛で1点ずつ返す。6回には木村拓也と小笠原の連打から、ラミレスの二ゴロの間に同点に追い付いた[1][2][11]。
◇ラミレスの連続安打が止まった夜
ラミレスは4打数無安打だったが、6回裏の二ゴロで同点の打点を挙げた。27試合続いていた連続安打はこの試合で止まった。巨人の主砲が無安打に終わった夜、初打席を迎えた新人の本塁打が勝敗を決めた[2][11]。
巨人のオーダーと打撃結果
打撃結果は左から打席順。打順欄の「同」は前の選手と同じ打順に途中出場したことを示し、安打・長打を赤字で表示した[1][2][11]。
| 位置 | 選手名 | 打順 | 打数 | 安打 | 打点 | 打撃結果 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| (遊) | 坂本勇人 | 1 | 4 | 0 | 0 | 遊ゴ / 遊ゴ / 二飛 / 投ゴ |
| (二) | 木村拓也 | 2 | 4 | 2 | 0 | 中安 / 左飛 / 中安 / 一直 |
| (一) | 小笠原道大 | 3 | 4 | 2 | 1 | 中飛 / 右中本① / 右二 / 空振 |
| (左) | ラミレス | 4 | 4 | 0 | 1 | 三ゴ / 二ゴ / 二ゴ① / 三ゴ |
| (中) | 谷佳知 | 5 | 4 | 0 | 0 | 遊ゴ / 三ゴ / 空振 / 二直 |
| (捕) | 阿部慎之助 | 6 | 2 | 0 | 0 | 遊ゴ / 四球 / 敬遠 / 見振 |
| (右) | 隠善智也 | 7 | 4 | 0 | 0 | 空振 / 中飛 / 捕邪飛 / 二ゴ |
| 投手 | クルーン | 同 | 0 | 0 | 0 | 打席なし |
| (三) | 古城茂幸 | 8 | 4 | 1 | 0 | 空振 / 左二 / 空振 / 遊飛 |
| (投) | 野間口貴彦 | 9 | 0 | 0 | 0 | 打席なし |
| 代打 | 田中大二郎 | 同 | 1 | 0 | 0 | 空振 |
| 投手 | 山口鉄也 | 同 | 0 | 0 | 0 | 打席なし |
| 代打 | 清水隆行 | 同 | 0 | 0 | 1 | 右邪犠飛① |
| 投手 | 越智大祐 | 同 | 0 | 0 | 0 | 打席なし |
| 代打 | 脇谷亮太 | 同 | 1 | 0 | 0 | 遊ゴ |
| 投手 | 西村健太朗 | 同 | 0 | 0 | 0 | 打席なし |
| 右翼 | 加治前竜一 | 同 | 1 | 1 | 1 | 右本① |
巨人は33打数6安打4打点、2四球、7三振。清水隆行の右邪犠飛は打席に数えるが、打数には含めない。加治前は9番の打順を引き継ぎ、代打ではなく右翼の守備に就いてから初打席に立った[1][2]。
| 位置 | 選手名 | 打順 | 打数 | 安打 | 打点 | 打撃結果 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| (遊) | 西岡剛 | 1 | 5 | 0 | 0 | 三飛 / 捕邪飛 / 遊ゴ / 三飛 / 三ゴ |
| (二) | 根元俊一 | 2 | 5 | 2 | 1 | 遊飛 / 右中本① / 中安 / 見振 / 二ゴ |
| (捕) | 里崎智也 | 3 | 4 | 1 | 0 | 中安 / 四球 / 空振 / 二ゴ / 右邪飛 |
| (一) | ズレータ | 4 | 5 | 3 | 0 | 中安 / 左二 / 二ゴ / 中安 / 振逃 |
| (左) | 大松尚逸 | 5 | 4 | 0 | 0 | 空振 / 四球 / 一ゴ / 遊ゴ / 空振 |
| (右) | サブロー | 6 | 3 | 1 | 2 | 四球 / 左二② / 空振 / 四球 / 見振 |
| (三) | 今江敏晃 | 7 | 4 | 0 | 0 | 投併 / 中飛 / 空振 / 遊ゴ |
| (中) | 早川大輔 | 8 | 4 | 0 | 0 | 中飛 / 右飛 / 空振 / 一ゴ |
| (投) | 清水直行 | 9 | 2 | 0 | 0 | 一ゴ / 空振 |
| 代打 | オーティズ | 同 | 1 | 0 | 0 | 空振 |
| 投手 | 久保康友 | 同 | 0 | 0 | 0 | 打席なし |
| 代打 | 福浦和也 | 同 | 1 | 1 | 0 | 左安 |
| 代走 | 大塚明 | 同 | 0 | 0 | 0 | 打席なし |
| 投手 | 川崎雄介 | 同 | 0 | 0 | 0 | 打席なし |
ロッテは38打数8安打3打点、4四球、11三振。「空振」は空振り三振、「見振」は見逃し三振、「振逃」は振り逃げ。ズレータの振逃も打数と三振に含めた。8回の大松は遊ゴの後、送球失策で二塁へ進んだため、遊ゴを安打や失策出塁には変更していない[1][2][11]。
| 球団 | 投手名 | 投球回 | 被安打 | 四球 | 奪三振 | 自責点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 巨人 | 野間口貴彦 | 3 | 5 | 3 | 1 | 3 |
| 巨人 | 山口鉄也 | 2 | 1 | 0 | 2 | 0 |
| 巨人 | 越智大祐 | 2 | 0 | 0 | 5 | 0 |
| 巨人 | 西村健太朗 | 2 | 2 | 1 | 0 | 0 |
| 巨人 | クルーン | 1 | 0 | 0 | 3 | 0 |
| ロッテ | 清水直行 | 6 | 5 | 2 | 4 | 3 |
| ロッテ | 久保康友 | 2 | 0 | 0 | 2 | 0 |
| ロッテ | 川崎雄介 | 1 1/3 | 1 | 0 | 1 | 1 |
巨人は野間口貴彦が3回3失点で降板した後、山口、越智、西村、クルーンの4人で7回無失点。越智は6、7回に対戦した6打者から5三振を奪った。ロッテは久保が7、8回、川崎が9回をいずれも3者凡退に抑えたが、10回に加治前の本塁打を許した。巨人の6回の安打から10回の一発まで、ロッテ投手陣は無安打に抑えていた[1][2][11]。
一軍通算2本塁打は、いずれも新人年の6月
一軍通算109試合・130打席・25安打・2本塁打・10打点。2本の本塁打は2008年6月6日と9日の2試合で放ち、その後の一軍91打席では本塁打を加えなかった。巨人を2014年限りで離れた後も社会人野球でプレーし、2020年に35歳で現役を引退した[4][6][7]。
◇右方向への長打が評価された
奈良県出身の加治前は、智弁学園高から東海大へ進み、2007年大学生・社会人ドラフト4巡目で巨人に入団した。NPBの登録プロフィールは175センチ、80キロ、右投げ右打ち。大学では首都大学リーグのMVPを2度受賞し、首位打者も獲得した選手だった[4][5]。
入団前の明治神宮大会では外角のスライダーを右中間席へ運び、その長打が巨人の視察担当者に評価されたと当時の記事は伝える。プロ初本塁打も外角の球を右翼席へ運んだ一打だった[3]。
| 試合 | 打席 | 打数 | 得点 | 安打 | 二塁打 | 三塁打 | 本塁打 | 塁打 | 打点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 109 | 130 | 119 | 5 | 25 | 3 | 0 | 2 | 34 | 10 |
| 盗塁 | 盗塁刺 | 犠打 | 犠飛 | 四球 | 死球 | 三振 | 併殺打 | 打率 | 長打率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 2 | 4 | 1 | 6 | 0 | 30 | 1 | .210 | .286 |
出塁率は.246。表はNPB一軍レギュラーシーズンの通算成績で、二軍・社会人野球・ポストシーズンは含めない[4]。
| 年 | 試合 | 打席 | 打数 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 打率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2008 | 35 | 39 | 35 | 8 | 2 | 2 | .229 |
| 2009 | 14 | 7 | 7 | 0 | 0 | 0 | .000 |
| 2010 | 4 | 4 | 3 | 0 | 0 | 0 | .000 |
| 2011 | 6 | 9 | 9 | 2 | 0 | 0 | .222 |
| 2012 | 47 | 68 | 62 | 15 | 0 | 8 | .242 |
| 2013 | 3 | 3 | 3 | 0 | 0 | 0 | .000 |
| 2014 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | — |
巨人在籍は2008~2014年の7年間で、一軍出場は2008~2013年の6シーズン。新人年の39打席で2本塁打を放ったが、その後の91打席では本塁打を記録していない[4]。
◇もう一本の本塁打
初打席から3日後の6月9日、西武戦では7番・右翼で先発し、4回裏に西口文也から2号ソロを放った。4打数1安打1打点で試合は3対9の敗戦。NPB一軍での本塁打はこの2本がすべてで、いずれも新人年の6月に東京ドームで放っている[4][10]。
◇2012年にも勝負どころで仕事をした
自己最多出場は2012年の47試合で、62打数15安打、打率.242、8打点。6月23日のヤクルト戦では4回に代打で押し出し四球を選び、左翼守備に残って、4対4の6回1死三塁から勝ち越しの左前打を放った。巨人は7対4で勝った[4][9]。
2012年の8打点は一軍通算10打点の8割に当たる。加治前は同試合の報道で、一打席一打席を大切にする思いを語っている[4][9]。
◇巨人を離れても、現役は終わらなかった
2014年限りで巨人を戦力外となり、2度のトライアウトを経て2015年から三菱重工長崎でプレー。NPB退団後も野球選手としての活動は続いた[6]。
チーム統合に伴って2017年に三菱日立パワーシステムズへ移り、その年の都市対抗4強入りに貢献。2018、2019年は打撃コーチも兼任した。2020年、三菱パワーで現役を引退し、社業に専念することになった。プロ7年と社会人6年を合わせ、現役生活は13年間に及んだ[7]。
◇二つの立場で知った東京ドーム
2020年11月の本人取材によると、都市対抗には4回出場した。社会人チームでは都市対抗出場を「東京ドームへ行く」と表現していたという。巨人では日本シリーズ、社会人では都市対抗という異なる舞台で東京ドームに立った[8]。
初打席のサヨナラ弾から12年後、加治前は社会人野球の選手としても東京ドームに立っていた。プロでの出場109試合に加え、退団後も6年間プレーした経歴を残す[4][7][8]。
記録と成績の範囲
対象はNPB一軍レギュラーシーズンの「初打席」。初出場・初先発・初安打・初本塁打とは区別する。二軍・社会人野球での成績は一軍の通算成績に含めない。
試合結果と投打成績はNPB公式、10回の守備交代・球種・打席経過はロッテ球団の一球速報を優先し、個別打席は専門記録サイトとも照合した。巨人の清水隆行とロッテの清水直行は別人であり、犠飛の打点も反映した[1][2][11]。
ニッポン放送の2026年6月の回顧にも当時の実況が残る。ただし回顧記事の得点表では延長10回が明示されていないため、スコアボードはNPB公式を採用した。球速・飛距離は確認できず、記載していない。資料確認日:2026年10月27日[1][5]。