詳細
◇三振を奪ってもアウトにならない仕組み
第3ストライクを捕手が正規に捕球できなかった場合、無死・1死で一塁に走者がいないとき、または2死なら一塁走者の有無にかかわらず、打者は一塁を目指せる。一塁でアウトにされず生きれば、三振は記録されてもアウト数は増えない。いわゆる振り逃げである[2]。
原因に応じて、三振と暴投、三振と捕逸、三振と失策などが併記される。見逃した第3ストライクでも、正規に捕球されなければ成立し得る。「バットを振らなかったから振り逃げできない」という理解は正しくない[2]。
本記事では、一軍最多の代表例3件と、別枠の二軍最多1件を取り上げる。全達成者一覧ではない。一軍と二軍を同じ順位表に混ぜない。
◇佐々木朗希の初回4打者連続
2022年7月1日 ロッテ対楽天12回戦 ZOZOマリン。佐々木朗希は、先頭の西川に振り逃げを許した後、小深田、浅村、島内を三振に仕留めた。対戦した4打者全員から三振を奪い、初回を無失点で終えた[3]。
| 選手名 | 打撃結果 | 打席後のアウト数 | 累計奪三振 |
|---|---|---|---|
| 西川遥輝 | 空三振・振り逃げ(暴投) | 0 | 1 |
| 小深田大翔 | 空三振 | 1 | 2 |
| 浅村栄斗 | 空三振 | 2 | 3 |
| 島内宏明 | 見三振 | 3 | 4 |
各結果は1回表。三振4、打者4、アウト3。第3ストライクの捕球が成立しなかった西川の打席も三振に数える。先頭に出塁され、他の3人でアウトを取った[3]。
球数はわずか15球。パ・リーグ公式動画も、この回を4者連続三振として紹介している。公式経過の島内の結果は見逃し三振であり、4人全てを空振り三振と書くのは誤りとなる[3][4]。
| チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽天 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 10 | 0 |
| ロッテ | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 2 | X | 6 | 10 | 0 |
佐々木の達成回は1回表。ロッテが6対4で勝利。4回表を終えると佐々木から小沼へ交代しており、記録した回と後の楽天の得点を混同しない[3]。
◇松井裕樹は4奪三振しながら失点
2018年5月4日 楽天対西武7回戦 楽天生命パーク。5対5で迎えた9回表、松井裕樹が登板した。炭谷、秋山から三振を奪ったが、2死から源田が暴投による振り逃げで出塁。最後に山川も三振に取り、4奪三振となった[5]。
| 選手名 | 打撃結果 | 打席後のアウト数 | 累計奪三振 |
|---|---|---|---|
| 炭谷銀仁朗 | 空三振 | 1 | 1 |
| 木村文紀 | 中安 | 1 | 1 |
| 秋山翔吾 | 空三振 | 2 | 2 |
| 源田壮亮 | 空三振・振り逃げ(暴投) | 2 | 3 |
| 浅村栄斗 | 四球 | 2 | 3 |
| 山川穂高 | 空三振 | 3 | 4 |
9回表の全6打者。木村の安打、浅村の四球も入れているため、4者連続三振ではない。木村は秋山の三振後に二盗。源田の振り逃げで木村が生還し、源田もその後二盗した。公式経過は振り逃げ後の走者を源田だけの一塁と示し、イニング得点は1。そこから木村の得点を確認できる[5]。
| チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 西武 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 | 1 | 6 | 9 | 1 |
| 楽天 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 5 | 7 | 0 |
4奪三振は9回表。奪三振数がアウト数を超える回でも、失点せずに終えられるとは限らないことを示す例。西武が6対5で勝利した[5]。
◇髙橋光成は捕逸による振り逃げ
2023年4月8日 ソフトバンク対西武1回戦 宮崎。髙橋光成は2回裏、栗原を見逃し三振に取った後、牧原大成の三振で捕逸が発生。中村晃も三振に取り、今宮の安打を挟んで上林から4個目の三振を奪った。松井や佐々木の例の暴投と異なり、この振り逃げは捕逸によるものだった[6]。
| 選手名 | 打撃結果 | 打席後のアウト数 | 累計奪三振 |
|---|---|---|---|
| 栗原陵矢 | 見三振 | 1 | 1 |
| 牧原大成 | 空三振・振り逃げ(捕逸) | 1 | 2 |
| 中村晃 | 空三振 | 2 | 3 |
| 今宮健太 | 右安 | 2 | 3 |
| 上林誠知 | 空三振 | 3 | 4 |
2回裏。牧原の出塁後、三振で2死となり、今宮の安打で一・二塁になってから上林の三振で終了。無失点だった[6]。
髙橋はこの日8回3安打2四球、11奪三振、無失点。9回は増田が投げ、西武が3対0で勝った。完投・完封はしていない[7]。
| チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 西武 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 | 6 | 0 |
| ソフトバンク | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 1 |
達成回は2回裏。一軍代表例は以上の3件で、同数記録の全達成者・全達成回を網羅した表ではない[6][7]。
関連記事チーム・試合1イニングで最も多く打順が回った試合◇木谷寿巳の5奪三振(二軍記録)
2010年5月8日 楽天対日本ハム4回戦 利府。木谷寿巳は7回表に、佐藤、岩舘、市川、杉谷、中島卓の5人全員から三振を奪った。岩舘と杉谷を暴投による振り逃げで生かしたため、三振を五つ数えながらアウトは三つだった[8][9]。
| 選手名 | 打撃結果 | 打席後のアウト数 | 累計奪三振 |
|---|---|---|---|
| 佐藤 | 空三振 | 1 | 1 |
| 岩舘 | 三振・振り逃げ(暴投) | 1 | 2 |
| 市川 | 空三振 | 2 | 3 |
| 杉谷 | 三振・振り逃げ(暴投) | 2 | 4 |
| 中島卓 | 空三振 | 3 | 5 |
7回表の全5打者。アウトは1→1→2→2→3、三振は1→2→3→4→5。五つの結果の種別はNPB記録員コラム、打者の順番は当日の報道と公式打撃成績を照合した[2][8][9]。
当日の日刊スポーツは、この回にイースタン・リーグタイの3暴投も記録したと伝える。振り逃げを生んだ暴投は二つなので、「5奪三振だから暴投も2」という数え方はできない。三つ目の暴投の正確な場面は、確認できた資料からは特定していない[9]。
| チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本ハム | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 4 | 1 |
| 楽天 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 5 | 0 | X | 6 | 13 | 0 |
5奪三振は7回表で無失点。その裏に楽天が5点を挙げ、最終結果は6対1。木谷は7~9回の3回を投げ、打者12、1安打、無四死球、7奪三振、自責点0で勝利投手。5奪三振は1回だけの数で、7はこの日の登板全体の数である[8]。
◇この記録の可能性
今回紹介した4や5は、確認された実際の最多記録であり上限ではない。振り逃げによる出塁が続けば、アウトを増やさず三振だけが増えるため、理論上は1イニングの奪三振数の上限はない[2]。
確認範囲と資料上の限界
確認日:2026年10月14日。対象はNPB一軍公式戦の投手個人の1イニング奪三振数。二軍最多は補足の独立節として掲載する。継投の合計、オープン戦、三軍、独立リーグ、海外記録は対象外。最多4・5の認定は2026年9月7日公開のNPB公式記録員コラムに基づく[1]。
同コラムの一軍4奪三振の達成数は27人・28度。これは資料が示す時点の数字で、掲載日の後まで独自に全試合を再集計した最新件数ではない。代表例3件は、当該回の打者・結果を公式打席経過で確認した[1][3][5][6]。
木谷の回は、公式記録員コラムの五つの結果の並びと当日報道の打者名を照合した。カウント、投球数、二つの振り逃げ以外の暴投の正確な発生時点は未確認のため作らない。当日二軍公式成績の略称に合わせて、打者名は佐藤、岩舘、市川、杉谷、中島卓と記した。佐藤・市川を別の同姓選手のフルネームへ推測で置き換えない[2][8][9]。
打者ごとの表は当該イニングで対戦した順。試合全体の先発オーダー表ではない。打席後のアウト数と累計奪三振は、公式結果・報道結果から本記事で再構成した。振り逃げも累計奪三振に1を加える。暴投等の走者進塁や盗塁は打席とは別に本文へ記載する。