1シーズンで経験した最多打順数

つなぐ役から走者をかえす役まで、打順が変われば期待も変わる。では、一人の選手が同じシーズンに経験した打順は、最多でいくつあるのだろうか。

一般的には?

打順には、出塁する、次の打者につなぐ、走者をかえすなどの役割がある。同じ球団の規定打席到達者を比較すると、一人が先発で経験した打順は平均5.60種類だった。同じ打順で何試合出ても、種類数では一つと数える[A2][B2]。

同年・同球団の規定打席到達5打者の平均
5.6打順

答え

1シーズンで経験した最多の打順の種類数9打順

答えは9打順。1番から9番までの全打順で、制度上の上限に当たる。達成者は一人ではなく、本稿では2013年の千葉ロッテマリーンズ・鈴木大地を取り上げる。この年は先発だけでも全打順を経験し、9月29日の西武戦で最後に残っていた1番で先発した。シーズンは全144試合に出場した[A2][A7][B1][B2][B4]。

年
2013年
選手
鈴木大地 ほか
チーム
千葉ロッテマリーンズ ほか
カテゴリ
打撃

普通と比べると

同年・同球団の規定打席到達5打者の平均
5.6打順
1シーズンで経験した最多の打順
9打順

同じ球団の規定到達者平均より3.40打順多く、約1.61倍。

2013年ロッテの公式戦144試合を対象に、規定打席447に達した全5打者の先発打順の種類数を集計。鈴木大地9、角中勝也6、根元俊一5、今江敏晃5、井口資仁3で、合計28÷5=5.60打順。選手を等しく重み付けし、鈴木も平均に含む。途中出場の打順、二軍、オープン戦、球宴、CSを除く。交流戦は含む。約1.61倍は9÷5.60を小数第3位で四捨五入。全球団・全歴代の平均ではない。集計日:2026年10月11日[A2][B2]。

詳細

◇最多の種類数は、打順のすべて

一度でも1番から9番までの各打順で出場すれば、種類数は9に達する。この問いの答えはこれ以上増えない。一方、誰がどの年に全打順を経験したかという達成者の一覧は、今後も増えうる。鈴木大地は単独の記録保持者という意味ではない[A7][B1][B2]。

「経験」を途中出場まで含めると、代打や代走で交代した選手の打順も対象になる。本稿の代表例は、それより範囲の狭い先発出場だけでも全打順を満たしている。経験した打順の種類数と、打順を変更した回数、各打順での本塁打数は別の記録である[B2][B3]。

プロ2年目の年間成績

鈴木は桐蔭学園高校、東洋大学を経て、2011年ドラフト3位でロッテに入団した右投左打の内野手。2012年は62試合だったが、翌2013年は144試合、551打席まで出場が増えた。打率.264、127安打、5本塁打、50打点。11三塁打はパ・リーグ最多だった[A1][A2][A5]。

鈴木大地の入団から3シーズンの打撃成績[A1]

年試合打席打数安打二塁打三塁打本塁打打点盗塁四球死球三振打率出塁率長打率
2012621601353751011013123.274.340.326
201314455148112720115502381266.264.330.383
2014144610533153297343745657.287.347.385

一軍レギュラーシーズンの年間合計。3年とも所属は千葉ロッテ。交流戦を含み、球宴やCSを含まない。率はNPB公式表示[A1]。

2013年はチームで唯一の全試合出場だった。先発133試合、途中出場11試合で、全試合先発でもフルイニング出場でもない。途中出場の内訳は代打5試合、代走3試合、守備から3試合だった[A2][B2]。

◇中心は下位打線で、上位や4番は少数

先発の内訳は、7番59試合、6番36試合、8番26試合。この3打順で121試合、先発133試合の約91.0%を占める。すべての打順を均等に打ったのではなく、主に下位打線を担いながら、少数の上位・中軸起用も経験したシーズンだった[B2]。

◇打順別成績は先発した試合に限る[B3]

打順先発試合打席打数安打打率本塁打打点四球死球三振出塁率長打率
1番21090.00000001.000.000
2番417145.35712302.471.643
3番1541.25000101.400.250
4番1441.25000000.250.250
5番313136.46200002.462.692
6番3614913036.27711410215.336.377
7番5923720248.23822218736.315.351
8番261029226.283111627.340.413
9番1441.25000002.250.500

二次資料の先発時集計。合計133試合、541打席、472打数124安打、5本塁打49打点。途中出場11試合の10打席、9打数3安打1打点などを含めると、公式の年間総数551打席、481打数127安打、50打点に一致する。各打順の率は資料表示[A2][B3]。

5番の打率.462は13打数6安打、2番の.357は14打数5安打。対して最も多かった7番は202打数48安打、.238だった。少ない打数での高打率を根拠に「5番が最適」とは結論づけられない。調子、対戦投手、起用時期が違い、打順そのものの効果を切り分けた数字ではない[B3]。

◇全打順が埋まるまでを日付で追う

全144試合の出場履歴から、その年に各打順で初めて先発した日を抽出し、該当9試合のNPB公式オーダーと個人成績を照合した。下表は打順順。各日の成績は年間の打順別合計とは異なる[A7][B4]。

打順初先発日対戦相手球場位置打数安打打点
19月29日西武西武ドーム(遊)400
24月14日ソフトバンクヤフオクドーム(二)420
35月12日楽天QVCマリン(遊)410
49月6日西武QVCマリン(遊)410
56月5日広島マツダスタジアム(遊)520
64月18日日本ハム札幌ドーム(二)531
74月8日楽天Kスタ宮城(三)→二421
87月5日西武西武ドーム(遊)400
98月24日楽天Kスタ宮城(遊)410

すべて2013年。各打順でのプロ初先発日ではなく、この年の初先発日。「三→二」は途中の守備変更。初日の抽出は二次資料の全試合履歴、先発の打順・位置・当日の成績は公式試合表で確認した[A7][B4]。

4月8日の7番から始まり、4月中に2番と6番、5月に3番、6月に5番、7月に8番、8月に9番を経験。9月6日の4番で8種類となり、9月29日に1番を加えて全9種類になった。球宴で打った9番を足した認定ではない[A7][B4]。

◇好調の打者を2番に置くという判断

4月25日の西武戦では、6番から2番に上がった鈴木が七回、岡本篤志からプロ初本塁打となる同点2ランを放った。ロッテは九回にホワイトセルの本塁打で勝ち越し、5対4で勝利。この日の鈴木は4打数3安打2打点だった[A8][B5]。

日刊スポーツの当日報道によれば、伊東監督は打線の停滞を受けて、好調の鈴木を上位に置いた。ただし経験の浅い中距離打者に中軸の役割を背負わせることを避け、つなぐ意識で打てる2番を選んだ。二遊間も根元と入れ替え、鈴木を遊撃手とした。打順と守備の変更には、当時の調子や役割を考えた理由があった[B5]。

この日はその年初めての2番ではなく、4月14日にも2番で先発している。報道の「2番遊撃」は、打順と守備を組み合わせた起用の意味で読む必要がある[A7][A8][B5]。

◇故障した今江の代わりに4番へ

9月6日の西武戦で、鈴木は4番・遊撃に入った。伊東監督は右足首を捻挫した今江の代役に、状態が良く、前向きに戦う姿勢のある鈴木を選んだと説明している。4番への起用は、若手を恒常的な主砲に据えたというより、故障による空席を埋める一日の対応だった[A7][B6]。

鈴木自身は4打数1安打。ロッテは0対8で敗れ、この年の4番先発はこの1試合だけだった。春には中軸を避けて2番に置かれた選手が、秋には4番の代役となる。その違いは、本人の状態とチームの必要が変わったことを当日報道から説明できる[A7][B3][B5][B6]。

◇最後の1番は、延長のサヨナラ負けの日

全打順がそろったのは、9月29日の西武ドーム、対西武22回戦。鈴木は1番・遊撃で先発し、4打数0安打、1三振。ロッテは九回に1点を挙げて5対5に追いついたが、延長十回に1点を失い、5対6のサヨナラ負けとなった[A7]。

◇2013年9月29日 西武対ロッテ22回戦 西武ドーム[A7]

球団名12345678910RHE
千葉ロッテ0120010010591
埼玉西武0031100001X6121

Rは得点、Hは安打、Eは失策。1Xは十回裏に1点を挙げた時点でサヨナラ終了したことを示す。全イニングと集計は公式試合記録[A7]。

◇ロッテの先発オーダーと当日の打撃成績[A7]

打順位置選手名打数安打打点四球死球三振
1(遊)鈴木大地400001
2(左)→中荻野貴司410103
3(一)福浦和也530001
4(三)今江敏晃411002
5(指)ブラゼル222100
6(右)清田育宏400103
7(二)根元俊一411100
8(中)岡田幸文300000
9(捕)金澤岳200011

先発9人の試合合計。途中出場の選手はこの表の対象に含めない。荻野は左翼から中堅へ守備変更。各打席の安打方向や、鈴木を1番に置いた監督の具体的な説明は、採用した資料では確認できていない[A7]。

◇チームは勝ち越しで3位に入った

伊東勤監督の就任1年目、ロッテは74勝68敗2分け、勝率.521で3位だった。打率.262はリーグ3位、572得点も3位。一方、防御率3.77は6球団で最も高く、584失点は5番目。打順を何度も変えたというだけで、年間を通して打線が機能しなかったとは言えない[A3]。

◇2013年パ・リーグ最終順位と主要チーム成績[A3]

順位球団名勝利敗北引分試合勝率ゲーム差打率得点安打本塁打盗塁防御率失点奪三振
1楽天82593144.582--.267628128797623.51537958
2西武74664144.5297.5.2575701226861133.54562984
3ロッテ74682144.5218.5.262572125791913.77584899
4ソフトバンク73692144.5149.5.2746601348125873.56562985
5オリックス66735144.47515.0.2559513123593843.315291064
6日本ハム64782144.45118.5.256353412271051203.74604824

レギュラーシーズンの最終成績。交流戦を含み、CSを含まない。勝率は引き分けを除く勝敗で計算。打率はNPB公式の表示桁を保った[A3]。

球団がスポーツナビに掲載したシーズン回顧で、伊東監督は接戦の中で成長したチームを評価し、鈴木がレギュラーとなったことを大きな収穫に挙げた。結果の出ない時期から戻って全試合に出場した経験が、今後の財産になるという見方だった。打順の幅は、調子に応じた組み替えだけでなく、一年使い続けられた若手の成長の中で生まれている[A4]。

◇同じチームの主力と打順の幅を比べる

選手名打順数先発した打順試合打席打率本塁打打点
鈴木大地91・2・3・4・5・6・7・8・9144551.264550
角中勝也61・2・3・5・6・7125525.288543
根元俊一51・2・3・7・9123559.262845
今江敏晃53・4・5・6・7132551.3251074
井口資仁33・4・5135566.2972383

同年のロッテで規定打席447に達した全5打者。打順の種類数と先発打順は二次資料、年間打撃成績は公式。平均は(9+6+5+5+3)÷5=5.60打順。鈴木も分母に含むため、「ほかの4人の平均」ではない[A2][B2]。

井口は125試合で3番、今江は97試合で4番を務めた。一方、鈴木は主力の間を埋めるように幅広い打順へ入ったことが起用表に表れている。これは打順の固定度の違いであって、9種類を経験した選手が3種類の選手より優秀だという順位付けではない[B2]。

◇三塁打と満塁本塁打も残した一年

鈴木の11三塁打は、長打が本塁打だけではなかったことを示す。ただし盗塁は2個なので、三塁打数をそのまま盗塁能力の高さと読み替えることはできない。守備は遊撃123試合、二塁21試合、三塁5試合に出場し、遊撃手としてベストナインを受賞した[A2][A5][A6][A10]。

8月22日の西武戦では8番・遊撃で先発し、三回の5号満塁本塁打などで5打数4安打5打点。三回には井口も満塁本塁打を放ち、ロッテは1イニングに2本の満塁弾を記録した。試合は18対1の大勝。「下位打順の日」は打点の役割が小さい日とは限らない[A9]。

翌2014年も144試合に出場し、153安打、打率.287を記録した。同年から2017年まではロッテの主将を務め、後には二塁、三塁、一塁などへも守備の幅を広げた。2013年の全打順起用は、長いキャリアの中で役割を変えながら出場した選手の、初期の一例としても読める[A1][A10]。

あわせて読む記録の歴史NPBシーズン三塁打ランキングTOP20三塁打を一番多く打ったのは誰なのか。歴代の三塁打記録を、出場試合数・安打数・走塁成績・当時のリーグ内順位から読み解く。

同じ上限に達した過去の例

選手名球団名年経験した打順数
船田和英ヤクルト19729
堀幸一ロッテ20039
後藤光尊オリックス20059
大松尚逸ロッテ20069
鈴木大地ロッテ20139

2016年1月18日付のベースボールチャンネルが、篠浦孝の研究として挙げた同一シーズンの全打順経験者5人。過去の例を紹介する範囲であり、現在までの全達成者一覧ではない。鈴木以外の各年の全試合オーダーを本稿で再集計したものでもない[B1]。

1972年の船田の例は、パ・リーグが指名打者制を導入する前のセ・リーグに属する選手の例でもある。9番を経験することは指名打者制のリーグだけに限られない。ただし、全打順で先発する機会の多さは、リーグや時代の起用によって変わる[B1]。

確認範囲と成績の読み方

答えは打順の種類数。対象はNPBの一軍レギュラーシーズンで、代表例は2013年の鈴木大地。先発だけで全打順を確認し、途中出場を含めても種類数の上限9は変わらない。出場144試合と先発133試合を区別し、偵察メンバーや代走だけの出場を先発打順に足さない。二軍、球宴、CS、オープン戦は集計対象外。確認日:2026年10月11日。

年間成績・順位・9つの確認試合はNPB公式、打順別の年間成績と起用集計はヌルデータ置き場f3の二次資料を使用。全9打順の各初先発日を抽出した履歴も二次資料。該当試合の先発・個人成績は公式と照合したが、年間133先発の全打席を公式から独自再集計した表ではない[A1][A2][A3][A7][B2][B3][B4]。

好調時の2番、故障者に代わる4番の理由は当日報道の監督発言に基づく。1番など残りすべての打順の起用理由を確定したものではない。少数の打数による打率差を、打順の適性や打順変更の因果効果と断定しない。制度上の上限到達を示す記事で、NPBが専用の最多打順部門で公認した単独記録との表現は用いない[B5][B6]。

何がすごいのか

  • 打順の上限である全9種類を、一つのシーズンの先発出場だけで埋めた[B2]。
  • 全144試合に出場しながら、6~8番が先発133試合のうち121試合を占めた。全打順を経験しても、中心となる打順はあった[A2][B2]。
  • 好調時の2番昇格、故障者に代わる4番起用など、具体的な事情のある変更が積み重なった[B5][B6]。

出典