最もタイトルホルダーの少ないリーグ優勝チーム

優勝チームには、投打のタイトルを獲得した選手がそろう印象がある。では、その人数が最も少なかったのはどんなチームだろう。

一般的には?

首位打者や最多勝などの成績タイトルは、リーグの個人成績で決まる。一方、優勝はチームの勝敗で決まる。複数タイトルを同じ選手が取ることもあり、タイトル数とタイトルホルダーの人数は一致しない。本稿では選手を重複なく数え、各年の同一リーグの平均と比較する。

答え

優勝チームの成績タイトルホルダー数0人

最少は0人。当時の成績タイトルの正式表彰を対象にすると、1968年の阪急ブレーブス、1973年の南海ホークス、1978年のヤクルトスワローズなどが該当する。

年
1968年 1973年 1978年
チーム
阪急ブレーブス(1968年) 南海ホークス(1973年) ヤクルトスワローズ(1978年)
カテゴリ
シーズン・順位

詳細

◇数え方をそろえる

対象は、その年・そのリーグで正式に表彰された、成績を基準とする個人タイトル。首位打者、本塁打、打点、盗塁、最高出塁率または最多出塁、最優秀防御率、最多勝、当時表彰のあった最高勝率、最優秀救援などを数える。選手が複数部門を獲得しても1人とする。[A1][A2][A3][A4][A5][A6]

MVP、新人王、ベストナイン、ゴールデングラブ、沢村賞などの選考による表彰は集計に含めない。3チームともMVPは輩出しており、「受賞者が誰もいない」という意味ではない。最多安打、救援、中継ぎなど、まだ存在しなかった表彰を現在の制度からさかのぼって加えない。

1978年の鈴木康二朗は、NPB年度別成績の最高勝率欄に掲載されている。ただし、この年のセ・リーグには最高勝率の正式表彰がなく、本稿の人数には含めない。成績上のリーグ1位もすべて数える定義なら、この年のヤクルトは0人にならない。[A3][A6]

1999年の中日は「主要タイトルなし」と紹介されることがあるが、岩瀬仁紀が最優秀中継ぎを獲得している。この部門も含める本稿では0人の例にしない。[B1]

◇普通と比べると

同年の1球団平均
年とリーグ同年の獲得選手の実人数1球団平均優勝球団
1968年 パ6人 ÷ 6球団1.00人0人
1973年 パ7人 ÷ 6球団約1.17人0人
1978年 セ6人 ÷ 6球団1.00人0人

平均は優勝・非優勝を含むリーグ全6球団の算術平均。同じ選手の重複受賞を除いた人数を6で割った。歴代の優勝チーム平均ではなく、該当年のリーグ内比較である。未表彰だった最多奪三振は、下のランキングでは参考成績として掲載するが、この人数には加えない。[A4][A5][A6][B2]

◇1968年の阪急ブレーブス

パ・リーグ 個人ランキングは3位まで。同率3位は全員掲載し、優勝球団の選手を太字で示す。

打率

順位選手名球団成績
1張本勲東映.336
2アルトマン東京.320
3土井正博近鉄.309

本塁打

順位選手名球団成績
1野村克也南海38
2アルトマン東京34
2大杉勝男東映34

打点

順位選手名球団成績
1アルトマン東京100
2野村克也南海99
3大杉勝男東映89
盗塁
順位選手名球団成績
1安井智規近鉄54
2阪本敏三阪急50
3広瀬叔功南海44

出典[P8][P27][P21]

防御率

順位選手名球団成績
1皆川睦男南海1.61
2村上雅則南海2.38
3池永正明西鉄2.45

勝利

順位選手名球団成績
1皆川睦男南海31
2米田哲也阪急29
3鈴木啓示近鉄23
3池永正明西鉄23

奪三振(参考)

順位選手名球団成績
1鈴木啓示近鉄305
2森安敏明東映250
3米田哲也阪急237

◇その他の表彰と集計対象

表彰
部門受賞者球団記録
最高出塁率張本勲東映.437
最高勝率村上雅則南海.818

奪三振は当時未表彰の参考順位。最高出塁率は当時の計算方式による。最多安打の正式表彰と中継ぎの表彰はこの時点では未制定。

◇1968年の順位表とチーム成績

順位
順位球団試合勝敗分勝率差
1阪急ブレーブス13480504.615—
2南海ホークス13679516.6081.0
3東京オリオンズ13967639.51513.0
4近鉄バファローズ13557735.43823.0
5西鉄ライオンズ13356743.43124.0
6東映フライヤーズ13551795.39229.0

[A1]

◇個人タイトルと対応するチーム成績

打撃・投手
球団打率本塁打打点盗塁防御率勝利奪三振
阪急ブレーブス.2421545171222.92280763
南海ホークス.2431275151092.92179591
東京オリオンズ.262155552803.3267655
近鉄バファローズ.234843981513.2857822
西鉄ライオンズ.2371104391073.1756687
東映フライヤーズ.248118454613.9751666

打率・本塁打・打点・盗塁は対応する個人部門との比較用。防御率・勝利・奪三振も同じ指標でそろえた。防御率はNPBが順位判別用に載せた桁数を保持。

得点・失点
球団得点失点得失点差完封勝利
阪急ブレーブス5384399915
南海ホークス54844510314
東京オリオンズ5785532510
近鉄バファローズ421491-7011
西鉄ライオンズ464486-2212
東映フライヤーズ472607-1353

◇優勝につながったと考えられる要因

タイトル争いでは惜敗でも、チームでは上位阪急の米田哲也は29勝で最多勝の2位、阪本敏三は50盗塁で盗塁2位だった。個人1位には届かなくても、優勝に貢献する成績だった。米田がMVPに選ばれたことも、成績タイトルの有無と評価が別であることを示している。[A1][P27][P40]

本塁打と投手陣の厚みが支えたと考えられるチーム打率は4位の.242だったが、本塁打は154本で2位。防御率は2.922で2位、失点は439で最少だった。米田以外にも水谷孝15勝、梶本隆夫12勝、石井茂雄11勝がおり、勝利を複数投手で積み上げた。個人タイトルを取らなくても、長打力と投手陣全体の水準が勝ちにつながったと考えられる。[A1][C1]

名将という説明だけでは足りない西本幸雄監督の采配を要因に挙げる記事もある。ただし、タイトル0人という結果だけから監督の寄与を定量化することはできない。成績では投打の強みと主力の惜しい2位が確認できる。[C1][C2]

◇1973年の南海ホークス

パ・リーグ 個人ランキングは3位まで。同率3位は全員掲載し、優勝球団の選手を太字で示す。

打率

順位選手名球団成績
1加藤秀司阪急.337
2張本勲日拓.324
3土井正博近鉄.316

本塁打

順位選手名球団成績
1長池徳二阪急43
2大杉勝男日拓34
3張本勲日拓33

打点

順位選手名球団成績
1長池徳二阪急109
2野村克也南海96
3張本勲日拓93
盗塁
順位選手名球団成績
1福本豊阪急95
2島野育夫南海61
3梅田邦三太平洋33

出典[P39][P5][P25]

防御率

順位選手名球団成績
1米田哲也阪急2.47
2田中章太平洋2.58
3成田文男ロッテ2.63

勝利

順位選手名球団成績
1成田文男ロッテ21
2山内新一南海20
3山田久志阪急15
3米田哲也阪急15
3東尾修太平洋15

奪三振(参考)

順位選手名球団成績
1成田文男ロッテ178
2鈴木啓示近鉄119
3新美敏日拓117

◇その他の表彰と集計対象

表彰
部門受賞者球団記録
最高出塁率張本勲日拓.448
最高勝率八木沢荘六ロッテ.875

奪三振は当時未表彰の参考順位。最高出塁率は当時の計算方式による。最多安打の正式表彰と中継ぎの表彰はこの時点では未制定。

◇1973年の順位表とチーム成績

最終順位
最終順位球団勝敗分勝率前期/後期年間勝率順
1南海ホークス68584.5401 / 33
2阪急ブレーブス77485.6163 / 11
3ロッテオリオンズ704911.5882 / 22
4太平洋クラブライオンズ59647.4804 / 54
5日拓ホームフライヤーズ55696.4445 / 35
6近鉄バファローズ42835.3366 / 66

最終順位はNPB年度別成績の掲載順。南海が優勝。年間勝率順は別列に掲載。プレーオフの勝敗はこの年間勝敗に加算しない。[A2]

◇個人タイトルと対応するチーム成績

打撃・投手
球団打率本塁打打点盗塁防御率勝利奪三振
南海ホークス.2601134831033.3568481
阪急ブレーブス.2701516102023.3077572
ロッテオリオンズ.2641395181123.4370645
太平洋クラブライオンズ.2391164701063.5859495
日拓ホームフライヤーズ.254133483913.9755563
近鉄バファローズ.237113409773.8342612

打率・本塁打・打点・盗塁は対応する個人部門との比較用。防御率・勝利・奪三振も同じ指標でそろえた。防御率はNPBが順位判別用に載せた桁数を保持。

得点・失点
球団得点失点得失点差完封勝利
南海ホークス5084931515
阪急ブレーブス64549914610
ロッテオリオンズ5484915713
太平洋クラブライオンズ499509-1010
日拓ホームフライヤーズ511563-5213
近鉄バファローズ424580-1568

◇優勝につながったと考えられる要因

年間最高勝率チームと優勝チームが違うこの年のパ・リーグは前後期制。南海は前期を制し、後期優勝の阪急とのプレーオフを3勝2敗で勝ち抜いた。年間勝率は阪急、ロッテに次ぐ3番目だったが、正式なリーグ優勝は南海である。下の最終順位と年間勝率順位を混同してはいけない。[A2][C3][C4]

タイトルの集中と、南海の上位選手阪急は加藤秀司の首位打者、長池徳二の本塁打・打点、福本豊の盗塁、米田哲也の防御率を獲得した。一方、南海も野村克也が96打点、島野育夫が61盗塁、山内新一が20勝で各部門2位だった。タイトルホルダー0人でも、中心選手の成績が低かったわけではない。[A2][P5][P6][P16]

前期の成果と短期決戦が結び付いたチーム防御率は2位の3.35、完封勝利15はリーグ最多。ただし年間の得失点差は15にとどまる。前期優勝で得た挑戦権とプレーオフの勝利が、この記録を生んだ条件と考えられる。野村監督の「死んだふり」は当事者の回顧として扱い、成績から意図的な敗戦を断定しない。[A2][C3][C4]

◇1978年のヤクルトスワローズ

セ・リーグ 個人ランキングは3位まで。同率3位は全員掲載し、優勝球団の選手を太字で示す。

打率

順位選手名球団成績
1水谷実雄広島.348
2若松勉ヤクルト.341
3松原誠大洋.329

本塁打

順位選手名球団成績
1山本浩二広島44
2ギャレット広島40
3マニエルヤクルト39
3王貞治巨人39

打点

順位選手名球団成績
1王貞治巨人118
2山本浩二広島112
3ライトル広島108
盗塁
順位選手名球団成績
1柴田勲巨人34
2長崎慶一大洋27
3河埜和正巨人23

出典[P9][P32][P12]

防御率

順位選手名球団成績
1新浦寿夫巨人2.81
2江本孟紀阪神3.10
3斉藤明雄大洋3.14

勝利

順位選手名球団成績
1野村収大洋17
2松岡弘ヤクルト16
2斉藤明雄大洋16

奪三振(参考)

順位選手名球団成績
1斉藤明雄大洋162
2新浦寿夫巨人152
3池谷公二郎広島132

◇その他の表彰と集計対象

表彰
部門受賞者球団記録
最多出塁王貞治巨人247
最優秀救援新浦寿夫巨人25SP
最優秀投手新浦寿夫巨人選考表彰

最多出塁は当時のセ・リーグの表彰。最高勝率はこの年は未表彰。最優秀投手は選考表彰として参考掲載し、成績タイトルの人数には加えない。最優秀救援は当時の救援ポイントによる。[A6]

◇1978年の順位表とチーム成績

順位
順位球団試合勝敗分勝率差
1ヤクルトスワローズ130684616.596—
2読売ジャイアンツ130654916.5703.0
3広島東洋カープ130625018.5545.0
4横浜大洋ホエールズ13064579.5297.5
5中日ドラゴンズ13053716.42720.0
6阪神タイガース13041809.33930.5

[A3]

◇個人タイトルと対応するチーム成績

打撃・投手
球団打率本塁打打点盗塁防御率勝利奪三振
ヤクルトスワローズ.279157628624.38268631
読売ジャイアンツ.2701365701113.6165734
広島東洋カープ.284205692544.37862682
横浜大洋ホエールズ.273132575643.9064691
中日ドラゴンズ.252141488364.4553561
阪神タイガース.254139525544.7941653

打率・本塁打・打点・盗塁は対応する個人部門との比較用。防御率・勝利・奪三振も同じ指標でそろえた。防御率はNPBが順位判別用に載せた桁数を保持。

得点・失点
球団得点失点得失点差完封勝利
ヤクルトスワローズ648633157
読売ジャイアンツ606508986
広島東洋カープ7135961175
横浜大洋ホエールズ596554428
中日ドラゴンズ509635-1268
阪神タイガース532678-1464

◇優勝につながったと考えられる要因

打撃の上位選手が複数そろっていた若松勉は打率.341で2位、大杉勝男も.327で4位。マニエルは39本塁打で同率3位だった。個人タイトルは取れなくても、打線に好成績の選手が複数いた。チーム打率.279と648得点はいずれも2位で、攻撃力はリーグ上位だった。[A3][C5]

投手成績だけで優勝を説明するのは難しいヤクルトのチーム防御率は4.382で4位、失点633は4番目に少ない。松岡弘は16勝で同率2位だったが、チーム全体が圧倒的な投手成績で優勝した年ではない。広岡達朗監督のチームづくりと打線の厚みが背景にあったと考えられる一方、得失点や防御率だけで接戦の勝ち方まで断定することはできない。[A3][C5][C6]

0人の意味を制度と一緒に読む鈴木康二朗は13勝3敗、勝率.813。成績上の最高勝率を記録した事実は残る。また、若松はMVP、松岡は沢村賞を獲得している。本稿の0人は、こうした記録や選考による受賞を否定する数字ではない。[A3][A6][C5]

確認日 2026年10月5日。歴代の最少値は、実在する0人の例を確認することで確定できる。本稿は該当例の完全一覧ではなく、確認した3例を詳しく取り上げた。年度・球団名・選手名は原則として当時の表記。斉藤明雄はNPB個人成績の斉藤明夫、長池徳二は長池徳士と同一選手。

各ランキングの「出典 P番号」は、NPB公式の個人年度別成績に対応する。3位までのすべての掲載値を該当年の成績行と照合した。順位は全選手成績から算出し、打率・防御率の順位はNPB年度別成績とも照合した。[R]

何がすごいのか

  • 個人のリーグ1位がいなくても、チーム全体の勝利は積み上げられる。タイトル争いの2位・3位、複数選手の好成績、投手陣の厚みは、タイトルホルダー数だけでは見えてこない。
  • 同じ0人でも、1968年は投打の安定と複数選手の貢献、1973年は前後期制とプレーオフ、1978年は打線の厚みという違いがある。数字の面白さは、各チームの勝ち方と制度を併せて読むと伝わりやすい。

出典